はじめに

“渋谷カルチャーの発信地”と呼ばれ、2016年から休業していた渋谷パルコが、2019年11月下旬にいよいよグランドオープンします。コンセプトは「世界へ発信する唯一無二の“次世代型商業施設”」です。

再開発が相次ぎ、大きく生まれ変わろうとしている渋谷で、パルコはどのような存在を目指すのでしょうか。6月18日に行われた記者発表の様子から探ります。


若者をターゲットにしない

「エンターテイメントシティ・渋谷のヘソとなりたい。心豊かになり、エンターテイメント性を体験するものがここにあるような場所にしたい」。この日の記者発表で、牧山浩三社長は力を込めました。

1973年に開業し、パート2、パート3と増築を重ね、渋谷から新しい文化やアートを大いに発信してきたパルコ。特にパルコ劇場では、43年間で約1,200作品を上演し、劇作家・三谷幸喜さんら、多くのクリエイターを輩出してきました。

裏の坂道を「スペイン坂」と名付けて若者が集まる通りにしたり、ライブハウス「クラブクアトロ」から最先端のアートやステージを発信したりするなど、パルコには“渋谷系”と呼ばれる若者カルチャーを牽引し、渋谷の街を作ってきた自負があります。

しかし、新たな渋谷パルコでは、若者だけをターゲットにはしないといいます。ターゲットは「ノンエイジ」「ジェンダーレス」「コスモポリタン」。年齢層も性別も絞らず、インバウンド客も受け入れていくという戦略です。

背景には、渋谷が若者の街であるという時代が終わりつつある現状があります。若年層そのものが減少する一方、渋谷はIT企業の集積地としてオフィス化が進みました。買い物熱旺盛な訪日外国人客も多く、新生パルコには「渋谷にいる大人に集まってもらう」(泉水隆常務)といいます。

劇場の中に商業施設がある

「元々、劇場の中に商業施設があるというコンセプトがパルコ。街に対する情報発信や若手クリエイターの育成など、パルコの文化事業のノウハウは詰め込んだものにしたい」(牧山社長)。単なる商業施設の枠を越え、物販以外に力を入れるのが特徴です。

中核はやはり「パルコ劇場」。座席数を旧劇場の約1.5倍の636席にまで拡張しつつ、売りであるステージと客席の近さは保ちます。年間公演の100%を自主プロデュースし、国内トップクラスの作品だけでなく、世界水準の舞台を上演すると宣言しました。

劇場パースパルコ劇場の客席イメージ図©2019,Takenaka Corporation

こけら落とし公演は、1月下旬からの「志の輔らくご in PARCO」。2月からは、これまで480回の上演を重ねた朗読劇「ラヴ・レターズ」が決まっています。

お得意の「アート&カルチャー」の分野では、美術専門誌「美術手帳」が現代アートを発信する国内初の直営店「OIL by 美術手帳」、コピーライターの糸井重里氏が主宰するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」が運営する空間などがオープンします。

また、国内初の任天堂直営オフィシャルショップ「Nintendo TOKYO」(ニンテンドートウキョウ)が開業。米国の直営店では最新のゲームやキャラクターグッズの販売だけでなく、歴代ゲームで遊ぶことができたり、新作ゲームの発売日にイベントが行われたりと、任天堂ファンを魅了する作りになっているそうです。

ほかに、「ポケモンセンター シブヤ」など、ゲームやアニメ、ファッションなど海外人気の高い「ジャパンカルチャー」を発信するエリアも設置。ゲーム好きだけでなく、インバウンド客も呼び込みそうです。

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