はじめに
最近ニュースを騒がせている年金問題。働く世代にとっては耳が痛いニュースに不安を感じることも多いのではないでしょうか。
コツコツ働いて払った年金が、「自分達の老後には戻ってこないかもしれない…」「2000万も貯蓄しなければいけない…」と不安を煽る言葉がいたるところに溢れています。
また一方では若い世代になればなるほど、健康寿命も長くなり、100歳まで元気で生きられるという「人生100年時代」についての話題も多いですよね。"健康に長生きする"それだけ聞くと素敵な話ですが、元気であればその分楽しみたいと思うもの。
ただし、楽しむとなると当然、元手が必要。そう考えると「将来、年金がもらえないなら今から節約して貯金に励まなきゃ」と今の生活の満足度を下げて未来に備える方もいるでしょう。しかし、不安を感じすぎて、今をおろそかにしすぎてしまっていいのでしょうか。
自分の人生において未来の満足と今の満足のバランスを取ってあげるのは自分自身だからできることです。強い印象が残るニュースの数字に振り回されず、自分の中に目を向けてあげると少し変わってみえてくるかもしれません。
今すぐ手に入るお金と遠い未来に手に入るお金
もう17年も前のニュースではありますが、2002年10月にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンという研究者がいます。彼は「行動経済学」という新しい経済の分野を生み、「心理学的研究を経済学に導入した」業績でノーベル賞を受賞しました。
従来の経済学の中に人の感情という認知心理学的要因を組み込んだ、新しい形の経済学と捉えることができ、その原理は自分の生活の価値観を振り返る時にも活用できます。
この分野の研究の中には時間とお金の価値観について面白い研究もあります。
たとえば、10年後まで待てば10万円をもらえるというチケットが当たったと想像してみてください。ただし、あと1年、換金するのを待てばそのチケットは12万円と交換できます。
こうした時、多くの人は1年くらい待つ事は簡単だと感じるかもしれません。ただ、目の前に10万円があってすぐ交換できる状況の時、1年待てば12万円になると言われても、いますぐ欲しいと感じてしまう人が多くなるとされています。
もちろん、この金額や年数は研究によって様々なパターンで調査され、その関係性で人の心理を解き明かそうとしています。この考え方は貯金や年金の考え方にも関係してきそうですね。
今が辛くない程度に貯金することの大切さ
上で紹介した研究では、自分が貯めた貯金をいつ使うか、使うのを待てるか、というのが問題ではなく、「誰かからもらえたとして」という幸せな条件が前提です。
現実問題、宝くじなどが当たらない限り、急に換金できるチケットは降ってきませんので、貯金とは未来の自分にあげるという考え方が適しているかもしれませんね。そうした時に、今の自分にお金を使うのか、数年後の自分により使ってあげたいのか。数十年後の自分になのか…ということが関わってきます。
今の生活と将来の自分の生活を想定し、今が辛くならない程度に将来の自分のために貯金していくという事が求められています。この今が辛くならない程度、将来が不安ではない程度というのは人によって異なります。
自分の幸せな生活像を描き、そのための準備をする
今の自分にお金を使うのか、将来の自分にお金を残すのか、誰しもが頭を悩ませるテーマだと思いますし、私自身もまだまだバランスがとれている自信なんてありません。
でも、考えないままで生活するのは怖いなと感じています。生活の全体像を考えてしまうと大きすぎるテーマですし、一つ一つ考えていっても良いと思います。
そして、ニュースで聞こえる数字の大きさに引きずられ、金額だけを見てしまい、お金を通して得られる価値をおろそかにしてしまっては本末転倒です。