はじめに
5月27日に発表された景気動向指数・一致CIの3月分改定値は、生産指数などは上方修正されたのですが、「所定外労働時間の減少などを新たに反映して」前月差が0.2ポイント悪化し▲1.1となり、基調判断も「悪化」のままでした。
同日時点では、一致CIは台風・地震で9月分の挽回生産をした2018年10月の103.9をピークに、2019年3月の99.4にかけて低下していました。6月7日に発表された4月分速報値での景気動向指数の基調判断が2ヵ月連続の「悪化」となる中、2018年10月を山として景気後退局面に入ったと考える人も多くなった可能性があります。
ところが、5月27日の0.2ポイントの下方修正は、本来なら生じなかったものが、厚生労働省が毎月勤労統計3月確報値を発表延期としたために生じた事態だったのです。
また、6月7日発表の4月分速報値での判断は「悪化」のままでした。しかし、一致CIのピークは10月で変わらないのですが、ボトムは3月から1月の100.4になり、4月の101.9にかけて改善傾向となっています。
ひょっとすると7月5日発表の5月分速報値で、景気動向指数の基調判断が「悪化」から「下げ止まり」に上方修正となる可能性さえ出てきました。
毎月勤労統計で新たなミスが発覚
不正調査が問題になった「毎月勤労統計」で新たなミスが見つかりました。これを受け、厚生労働省は5月24日公表予定の3月分確報と2018年度分確報の公表を、発表当日の公表時間になって急遽延期しました。
常用労働者数の推計で、雇用保険のデータを利用し常用労働者数を補正していますが、2018年7月分の集計で本来は同年6月分の雇用保険データを使用すべきところを、誤って5月分のデータを使用したことが理由です。
5月16日にミスに気づいたものの、公表は遅れました。報道によると「ミスが調査結果にどう影響するかを把握するのに時間がかかった」と説明したといいます。しかし、前日までに公表延期を発表できたのに、なぜ統計の公表時間になって行ったのか、理解できません。
やり直しの結果、現金給与総額の2018年7月分について37万8,257円から108円少ない37万8,149円に修正しました。2018年8月~2019年2月分も公表値より2~10円少ない金額に修正しました。厚生労働省によると、雇用保険や労災保険の給付には影響が出ないということです。
同省によると影響は軽微だということですが、判断が「悪化」に転じたことで注目されている景気動向指数・一致CIなどの解釈に、必要以上の悪影響をもたらしたことは意識されていません。