はじめに

脱税の疑いをかけられないためには?

脱税は基本的に仮装隠ぺいの意図がある場合、つまり、意識的に脱税をした悪質性が高い事案について指摘されるものですが、よほどのことがない限りは、脱税で捕まることはないと思ってください。

しかし、疑いをかけられ、税務調査に来られる可能性は、個人でも十分にあります。定期的に税務調査を受けている会社の社長で後ろ暗いことは何もなかったとしても、税務調査の間は夜も眠れないという人もいます。それぐらい、税務調査を受けるということは、精神的に追い詰められることなのです。

そのときに、「決して私は脱税していません」と主張するためには、どうすればいいのでしょうか?

脱税だと指摘するためには、国税当局はそう言えるだけの証拠をつかまなければなりません。逆に言うと、【脱税をしていない=適正な処理を行っている】という証拠を日頃から残すようにしておけば、国税当局に脱税の意図はなかったと思ってもらうことができます。

まずは、取引成立の事実を明らかにするために、契約書を作成するようにしましょう。また、法律で作成が義務付けられているような書類は必ず作成するように心がけます。調査官も人間です。きっちりと各種書類を作成していることがわかれば、調査官の捜査対象に対する印象が大きく違ってきます。

他にも、請求書や納品書、見積書、領収書等の書類保存と帳簿との整合性をとるようにします。さらに、取引事実について、報告書や稟議書、議事録を残すようにしてください。場合によっては、写真を撮って記録しておくのも証拠になります。

たとえば、プライベートではなく、業務上必要な海外出張に行った場合は、仕事で訪問した会社や取引先との接待の場の写真を撮影して残しておきます。どのような行程だったのかがわかる日程表もあるとよいでしょう。一部プライベートの旅行も含まれている場合は、どこからどこまでが業務だったのかがわかるように証拠を残しておき、経費も業務用と非業務用とにわけておきます。

当然のことながら、これらの証拠書類の準備が有効になるのは、脱税の意図がなく、適正な申告と納税を行っていることが大前提になります。

「天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず」という言葉にあるように、悪意を持って脱税を働いた場合は、国税当局は脱税者を見逃すことなく、あらゆる手段を使って不正を暴き、追及します。

本シリーズで、その一部を垣間見ることができたと思っていただけたら幸いです。

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