はじめに
残業代の支払いは2割程度
人材サイト「智聯招聘」の調査報告を見ると、問題なのは残業が常態化しているうえに、成果主義が先行し、残業代がほとんど支払われていない点にあることがわかります。実際、残業代が支払われているのは全体の2割程度となっています。
このような働き方に対する議論を加熱させたのが、アリババグループの馬雲(ジャック・マー)会長による996容認発言です。馬会長はSNSの「微博」で、「996でしっかり働ける人はむしろ幸せであり、若いうちに他人より多く働かなければ、成功もすばらしい生活も手に入れることができない」と発言しました。
しかし、この馬会長の発言に対して、中国共産党の機関紙である人民日報は批判記事を掲載し、ネットユーザーからも多くの批判コメントが寄せられました。馬会長はこれに対して、「どんな会社も社員に996を強制するべきではない」と最終的に発言を引っ込めざるを得なくなりました。
“モーレツ中国”は終焉へ?
智聯招聘の調査報告から、サラリーマン自身の996に対する考え方をみると、「支持しない」が圧倒的に多いことがわかります。内訳は「ワーク・ライフ・バランスが大きく崩れる」(44.6%)、「労働法に違反している」(13.5%)、「身体に良くない」(12.0%)となっています。
このように中国においても、経済の高度成長期に見られたような経済的・物質的な豊かさをモーレツに追い求める働き方は、もはや終焉を迎えつつあります。
経済成長とともに輝かしい一時代を築いた馬会長世代の考え方と、所得や生活が一定程度まで達し、デジタル化によって便利になった現在の若者の考え方は、一線を画しています。中国では、人々の働き方や生き方が大きく見直されるといった社会の転換期を迎えているともいえるでしょう。