はじめに

6月18日にサークルKサンクスのURLがオークションにかけられ、6000万円で落札されたことが話題になりました。

サークルKサンクスは2018年11月に営業を終了し、ブランドもファミリーマートに一本化されています。もう使われることがないはずのURLが高額で落札されたのは、いったいなぜでしょうか。


過去には8億円の買収事例も

実は、何気なくのぞいているウェブサイトのURLにも資産としての価値があるという考え方があります。URLの中でも、「〇〇.com」や「〇〇.jp」というドメイン部分が価値になります。ドメイン名は世界に1つしか存在しないため、みんなが欲しがるドメインにはプレミアがつき、高額で買い取られることがあります。

最近では、GMOインターネットが2014年に取得した「z.com」の買収事例が話題になりました。プレスリリースによれば、同社は「z.com」の買収に8億円を投じたことが明らかになっています。誰でもすぐに覚えられるドメイン名が同社のブランド戦略にかなったことや、1文字のドメインが世界に6つしかないことが高額での買収要因となったようです。

ちなみに、「z.com」のようなドメイン保有者の1人に、テスラやスペースXのCEO(最高経営責任者)として有名なイーロン・マスク氏がいます。マスク氏は、X.comというオンライン銀行の立ち上げ時に「x.com」を取得したと言われています。

X.comは後にPayPalと合併しました。現在「x.com」にアクセスすると、「x」という文字だけが表示されるウェブページとなっています。このような珍しく覚えやすいドメインの売買は2000年代初期に最も活発となり、時には当時の為替レートで10億円を超える事例もあるほどでした。

現在は、そのような覚えやすいドメインはすでに誰かが所有しており、めったに出回ることはありません。さらに、GoogleやYahoo!といった検索エンジンの発達によって、URLを手で入力してウェブページにアクセスすることも珍しくなってきました。そこで、最近ではドメインの価値が、短さや覚えやすさよりも、ブランド価値がついているかという点にシフトしてきています。

ドメインには「のれん」の価値がある?

本来は単なる文字列の「circleksunkus.jp」というドメインが、数千万円もの価値を有することになった背景の1つに、ドメインが有する「のれん」部分の価値がブランドの成長によって向上したためという要因があると考えられます。

「のれん」とは主に企業の買収時に用いられる言葉で、企業全体の価値のうち、いわゆる「見えない資産」の部分を指します。

企業には、数値で算出できる負債額や資産に加えて、これまで培ってきたブランドや信用といった、数値にすることが難しい資産を保有しています。お金があれば誰でも買えるコンピューターなどの設備とは異なり、ブランドや信用はそう簡単に浸透させられるものではありません。

企業が長期的に成功していくためには、このような目に見えない資産こそが重要であるといっても過言ではありません。そのため、企業の買収時には、のれん部分の資産を数値換算して評価し、会社の保有資産より高い金額が支払われることがよくあります。

これをドメインについて考えてみると、「circleksunkus.jp」は通常であれば5,000円から1万円もあれば登録でき、維持費用もほとんどかかりません。しかし、そのようなドメインに6,000万円もの価値がついた背景には、サークルKサンクスという名称が多くのユーザーが認知できるブランドとして、のれん価値が付加されたということもできそうです。

(写真:ロイター/アフロ)

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