はじめに

落札者はドメインをどう活用するのか

独立行政法人 工業所有権情報・研修館の運営する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」によれば、「サークルケイサンクス」という呼び名には、現在もファミリーマート名義で商標が登録されています。したがって、同様のブランド名を利用したビジネスを行うことは難しそうです。では、ドメインはブランド名を使わずに活用できるのでしょうか。

SEO対策の観点で言えば、「circleksunkus.jp」にアクセスしたユーザーを、誘導したい別のウェブページにリダイレクトさせることで、ブランド名を使わずにビジネスなどに応用させることが可能です。

SEO対策とは、検索エンジンに最適化した処理を特定のウェブページに施すことをいいます。この対策を施すことで、自分のウェブページが検索結果の上位に表示されやすくなります。

リダイレクトとは、ウェブページの転送をいいます。一定の処理を加えたうえでリダイレクトされると、転送元のドメインが有する価値をある程度維持したまま、転送先のURLに引き継がせることができます。

検索エンジンがあるウェブページを評価するうえで、そのページのURLがどれだけ外部から参照されているかという項目があります。「circleksunkus.jp」関連のURLは外部ウェブサイトから多く参照されているため、落札者はSEO対策のためにこのドメインを購入し、別のウェブページにリダイレクトさせる目的があると推測されます。

ただし、検索エンジンの評価方式は日夜変動しています。現在は、一定の効果が見込まれる手法といわれているものの、有力な中古URLからのリダイレクト処理が、将来にわたっても効果を発揮するかは未知数であり、一種の賭けに近いといえるでしょう。

ファミマには利なし?

なお、今回のドメインオークションの出品者は、GMOインターネットでした。ドメインが失効したに直後に同社が取得し、同社の運営する「お名前.com」というドメイン売買を行うウェブサイトでオークションにかけられました。したがって、ユニー・ファミリーマートホールディングスに落札金額が支払われることはありません。

結果論にはなってしまいますが、市場が6,000万円と評価するほど有力なドメインであれば、ブランドの価値が時とともに低下するまでの間、ファミリーマートのウェブページにリダイレクトさせるなどしてアクセス数の足しにするという活用の選択肢もあったのではないか、と考えられます。

また近年では、中古のドメインがアダルトサイトやフィッシング詐欺サイトにリダイレクトされるなどして、悪用されるケースもあるようです。ドメインが仮に悪意のある落札者の手に渡った場合、トラブルに巻き込まれるリスクもあるため、しばらくは様子を見て、むやみにアクセスしないように心がけておくべきでしょう。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>

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