はじめに
ビジネスの現場で起きたさまざまな悩み事に対して、リクルートマネジメントソリューションズの人事コンサルタントがお答えする新シリーズ。今回は30代女性のお悩みに、コミュニケーションサイエンスチームのリーダーをしている松木知徳さんが回答します。
【相談者のお悩み】
あるプロジェクトで目標が達成できないおそれがあり、プロジェクトメンバー全員で緊急対策会議を開催しました。すると、プロジェクトのオーナーである上司から「自分が君たちの立場だったときは目標達成に向けてもっと必死にやっていたし、労働時間なんて今の比じゃなかった。甘いよ!」と言われました。
正直なところ、プロジェクトの成否が給与やボーナスに大して反映されるわけでもなく、やりがいといえるような新たなチャレンジもない中で、頑張る気にはなれません。また、前時代的な上司の考え方にもちょっと引いてしまいました。目標を達成することは大事だと思いますが、こういった状況のとき、何からどう改善したらいいのか、よくわかりません。(30代女性)
仕事に対する価値観は大きく変化
昭和によく見られた「モーレツ社員」は、昨今の「働き方改革」の中で化石のような存在になり、若手社員は言葉すら聞いたことがないかもしれません。テレビドラマは世相を反映しており、かつてよく見られた、みんなが徹夜で業務をやり遂げるようなシーンはなりを潜め、残業をする従業員が圧倒的に少なくなっていることに気づきます。
先日まで放映されていたドラマ「集団左遷」では、廃店を予定された大手銀行の片岡洋支店長(演:福山雅治)が「頑張りましょう!」を口癖に支店メンバーを動機づけようとするものの、具体策の見えない熱血リーダーの根性論的な発言に対し、当初メンバーも冷ややかな反応を示すシーンがありました。
また、同じクールで放映されているドラマ「わたし、定時で帰ります。」では、ヒロインの東山結衣(演:吉高由里子)が残業しないことをモットーとしたワーキングウーマンを演じ、父親や上司、先輩など、世代により異なる仕事観を持つ相手との葛藤を通じながら、新しい生き方を表現しています。
いつの時代も「世代間ギャップ」は発生
このような「世代間ギャップ」は、最近になって始まったことではありません。「最近の若者たちの態度についての不満」の記述は、古代ギリシャ時代にはすでに存在していたと言われています。つまり、あなたの上司や先輩も、さらに上の世代と「世代間ギャップ」を抱えているかもしれません。
われわれの仕事や組織に対する価値観は常に変化しています。これらの価値観は、自身の成功体験や過去の上司からの影響など、さまざまな要因から形成されるため、育ってきた時代背景によって価値観も違って当然です。
たとえば私の所属するリクルートマネジメントソリューションズは、新入社員導入研修の受講者へ意識調査を毎年実施していますが、「あなたが社会人として働いていく上で大切にしたいことは何ですか?」という質問に対して、「社会人としてのルール・マナーを身につけること」「何があってもあきらめずにやりきること」という回答は、過去10年間で最低ポイントという結果になりました。一方で、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」「仕事で高い成果を出すこと」は過去最高になっています。
この調査結果からは、最近の新入社員は、欲しい情報が手に入りやすくなったことに加え、「働き方改革」が叫ばれる中、効率的かつ最短でのゴール到達を目指す傾向を分析できます。現在管理職になっている世代の中には、試行錯誤を繰り返しながら良い方法を見つけ出し、このプロセスこそ自身の成長につながったと考えている人が多く、両者の仕事に対する意識や上司や先輩に期待することが異なっていたとしても不思議ではありません。