互いの価値観を知らないことで起きる軋轢

しかしながら、価値観は目に見えるものではないため、言葉の意味は理解できても、その背景が共有されないと、思わぬ軋轢を引き起こすことがあります。

言葉の意味、知識、立場、価値観など、前提に違いがあることにより、コミュニケーションに齟齬が起きやすくなります。懸命に同じ情報を伝えようとしても、各人の持つ前提により受け取るメッセージが変わってしまうのです。

「集団左遷」を例にとると、「頑張る」という行為自体が悪いことだとは行員メンバーも思っていないでしょう。しかしながら、「頑張る行動がなぜ成果に結びつくのか」と、行動と成果の間の因果が見えないと納得できない世代と、過去の経験から頑張ればきっとうまくいくと信じて一歩を踏み出せる世代との間では、「頑張りましょう」という言葉から受け取るメッセージが異なるのです。

しかし、ドラマの後半では、この価値観のギャップを乗り越え、強い絆で結ばれたチームが大躍進をすることになりました。

コミュニケーションのギャップを生む原因がお互いの前提となる価値観などの違いだとすれば、ギャップ解消のためにはお互いの前提の違いを理解し合うことが必要となります。

ギャップの要因であるお互いの前提がわかれば、与えられた情報の意味するところが腹落ちするようになります。上司が発する言葉の表層をとらえて「うちの上司は考えが古い」と一蹴してしまうのではなく、その背景を理解しようとする姿勢がコミュニケーションを円滑にするのです。

コミュニケーションギャップ解決の方法は?

「わたし、定時で帰ります。」の中で、結衣が仕事一筋で生きてきた父親と和解するシーンでは、父娘がお互いの価値観を受け入れることで、わだかまりが解けていきました。このようにお互いの理解によってコミュニケーションを改善できるのがベストですが、職場においてすべてが相互理解で解決できるわけではありません。どんな解決策が存在するのかを最後に見ていきましょう。

コミュニケーションの研究者であるアダムスとガレインズは、自身の欲求、相手の欲求のいずれを重視したのかで交渉結果を次の5つに分類しています(出所:相川充・高井次郎<2010> 『コミュニケーションと対人関係』<誠信書房>)。「回避」(解決のための行動をとらない)、「対決」(自分の要求を押し通す)、「宥和」(相手の要求をのむ)、「妥協」(相互に譲歩する)、「協働」(双方の満足行く選択肢を創出する)です。

あなたは日常、どの解決方法を取ることが多いでしょうか。理屈上は「協働」を目指し、お互いがwin-winになる創造的な解決を見つけ出すことがベストなケースが多いかもしれませんが、現実の場面では、あえて別の方法をとることもあります。これらの解決法を短期的な勝敗のように位置づけると、どうしても攻撃的な「対決」姿勢になり、お互いに主張を戦わせることになりがちです。

しかしながら、長期的な結果を見据え、相手を論破できるとしても、あえて相手の意見を受け入れたり、相手の非を責めたい気持ちを抑えて第三者に仲介を頼んだりすることは大切です。長期の時間軸で考えると、コミュニケーションの奥深さに気づかされます。

気遣いがコミュニケーションの質を変える

冒頭の「根性論」を振りかざす上司に対して、「昔とは仕事の内容も労働時間への規制も違う!」「そもそもプロジェクトの計画に無理があったのではないか」とか、全面対決モードになってしまうと、相手も意固地になってしまい、かえって状況を悪化させる可能性があります。その場では上司を打ち負かしたとしても、その後のことを考えると必ずしも得策ではないかもしれません。

そんな時にはまず、相手の意見を受け止め、一呼吸置いて冷静になってから、相手との関係や望ましい行動を引き出すためには、どの解決策が良いかを考えてはいかがでしょうか。自分と相手の価値観の違いを意識するだけでも、コミュニケーションの質は大きく変わるはずです。