はじめに
日本より格段にキャッシュレス化が進み、モバイルを使った新たなサービスが浸透している中国。テクノロジーのおかげで、ここ数年で生活は様変わりしたといいます。
報道などでよく目にするものの、実際はどこまで生活に浸透しているのでしょうか。上海でモバイルライフを体験してみました。
30分でスーパーの品物が届く
「アリババが展開する次世代のスーパーマーケットがある」。そう聞いて訪れたのが、上海市内で数店舗を展開する「盒馬鮮生(フーマーションシェン)」です。
アリババグループは、言わずと知れた中国の巨大IT企業。QRコード決済「アリペイ」やECサイトを展開していますが、実際に店舗を持つスーパーまで運営しているとは驚きです。
店舗に入ると、生鮮食品から日用品まで多数の商品が並んでいる風景は、日本のスーパーとそう変わりません。ところが、このお店、3キロメートル以内の場所であれば、スマホで注文後、最短30分で商品を届けてくれるというのです。生鮮食品を届けてくれる「アマゾンフレッシュ」ですら、最短4時間だというのに!
速さの秘密は天井にありました。天井をレールのようなものが走り、レールにぶら下がったバッグが次から次へと店舗の奥のほうへ運ばれていきます。店内には、客に交じって、スマートフォンとバッグを両手に持って売り場を走り回り、次から次へと商品を詰め込む店員が何人もいました。
天井を走る買い物バック
彼らは商品を詰め終わると、昇降機のような機械にバッグをセット。バッグはレールを伝って天井を走り、バックヤードに吸い込まれていきます。バックヤードでは商品が発泡スチロール箱に詰められ、スタッフがすぐにバイクで配達するのだそう。
もちろん、店内で商品を購入する場合はキャッシュレスで、基本的に決済はアリペイです。商品を選んだ客は、かごをもって大型のモニターの前へ。センサーが商品情報を読み取って画面に表示し、客が確認すればQRコードが表示されます。客がスマホでQRコードを読み込めば、会計は終わりです。案内係が1人いるだけで、レジもレジ係もゼロです。
レジではなくてモニターに向かって決済
まさにECサイトのオンラインの世界と、私たちの日常であるオフラインの世界が融合したスーパー。現地では「新しい小売り」(ニューリテール)と呼ばれ、拡大しているそうです。
QRコードのない店がない
上海の街を歩くと、どんなに小さな商店でも、店頭にアリペイと、アリババに並ぶIT大手「テンセント」が運営する「ウィーチャットペイ」のQRコードが貼ってあることに気がつきます。お年寄りが1人で店番をしているような薄暗い店で同様です。財布から現金を出す人はあまり見かけず、老若男女ともにスマホをピッとかざして支払いをしていました。
地下鉄の券売機、路線バス、自動販売機などもすべてQRコード決済。逆に、クレジットカードを使っている人はほとんど見かけませんでした。レストランやカフェでも、テーブルにQRコードが貼ってあり、そのまま席で決済します。
QRコードで利用するシェア自転車を利用する人も目立ちました。テンセントが投資する「摩拝単車(モバイク)」などのシェア自転車サービスです。通勤や通学だけでなく、日常の足として気軽に使われているそう。
街中でよく見かえたシェア自転車
アプリをダウンロードし、利用登録をすれば誰でも利用可能。スマホで近くにある空き自転車を検索し、自転車のQRコードを読み取って解錠します。好きな場所まで乗り、目的地近くで乗り捨て。料金も30分1元(約16円)程度と格安です。
シェア自転車のサービスは、日本でも一部の都市で社会実験が行われていますが、黒字化が難しく、本格導入された例はわずか。中国でも収益性などの課題はあるものの、上海ではすっかり市民の足として定着していました。「QRコード決済」「高速鉄道「ネット・ショッピング」「シェア自転車」は、中国の新4大発明と呼ばれているそうです。