好転したのは金融政策だけ

昨年後半の下落をもたらした要因・理由として、以下の6つが考えられます。

(1)貿易問題などにより、世界景気が後退局面入りする懸念(中国景気、ハイテク株などの業績懸念)
(2)金融政策正常化(利上げ、米FRB<連邦準備理事会>資産の縮小)の影響
(3)トランプ政権の不安定化、政策
(4)米中貿易・知財問題への懸念
(5)欧州の政治問題(特に、英国のEU離脱)
(6)中東問題(原油価格への影響)

ほとんどの要因が昨年の後半と変わらず、現在も問題がくすぶっているように感じるのではないでしょうか。

明確に好転しているということができる要因・理由は(2)と考えられます。FRBは、昨年の12月頃まで金融政策正常化を目指していたと思われますが、足元で米国の金融政策はハト派的と呼ばれる金融緩和を指向する傾向が明確になっています。

2019年6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における参加者の政策金利見通しでは、3月会合では1人もいなかった「年内の利下げ予想」が17人中8人にまで増加。しかも、うち7人が「年内2回の利下げ」を予想するという結果になりました(1回の利下げを0.25%と仮定)。これらのことから、FRBはハト派的スタンスに転じたと評価できると思われます。

米国株高の恩恵を享受できるのは?

それでは、その他の要因・理由については、どのように考えるべきでしょうか。

まず、(1)の景気です。一時は2%を下回る水準まで米10年国債を購入した債券の市場参加者と比較すれば、私は景気が後退局面入りすることに懐疑的です。しかしながら、景気への懸念は10~12月ほど酷くないという評価が可能であったとしても、懸念自体を否定することは困難であると思われます。

次に、(3)トランプ政権の不安定化についても、昨年後半に報道されたジェームズ・マティス元国防長官の辞任ほどの不安定化を示唆するニュースはないにしろ、唐突なメキシコへの関税提起など、株式市場に悪影響を与える要因・理由から取り除くことは困難であると考えます。

(4)についても関税は強化中、(5)についてはテリーザ・メイ英首相が辞任、(6)についてはイランとの対立激化といった形で、昨年の10~12月より悪化したという見方も可能であると思われます。

となると、仮に「(2)の金融政策が今後ハト派的に転換すること」だけが、昨年の後半と比較した環境改善なのであれば、これは金融政策の正常化に取り組んできた国のみがメリットを享受できるという見方が成立する可能性があります。

特に、わが国の金融政策は「ステルス・テーパリング」と呼ばれることもある国債買い入れ額の減額を除けば、正常化と評価できる施策には踏み込めていません。加えて、日米の金融政策の方向性の違いは、円高・米ドル安圧力として働く可能性があります。

米国株と比較すると、日経平均株価や、特にTOPIX(東証株価指数)の出遅れ感が目立つ状況です。米国株の上昇は他の国の株式市場に波及するという見方も可能ではあるものの、上記のような理由から、安易に出遅れと評価することには十分な注意が必要と考えます。

<文:チーフ・グローバル・ストラテジスト 柏原延行>