はじめに
昔から、人々に宝飾品として好まれている金(ゴールド)。“腐る”ということがないので、価値の貯蔵としても利用されてきました。
長らく通貨としても利用され、今でも世界の中央銀行が資産として保有しています。もちろん、資産運用として金に投資する投資家は多く、先物取引も整備されています。
今回は、宝飾品としての金ではなく、投資先としての金の魅力について考えてみます。
金価格のベースにあるものとは?
金に投資しても、株式や債券など証券投資で得られる配当や金利は受け取れません。また、原油のように消費されて無くならず、新たに掘り出された分だけ増えていきます。さらに、株式ならば企業収益の拡大が株価上昇の源泉になりますが、金にはそれがありません。
では、金の価格は何を源泉に上昇しているのでしょうか。経済成長により宝飾品需要が高まって上昇するといった面もありますが、実は生産コストの上昇にあると考えられるのです。
金価格の推移
リサーチ会社「ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ」の資料などから金の総生産コスト(減価償却を含む)をみると、2002 年に金価格が1トロイオンス当たり313 ドル(月次平均、1トロイオンス=約31.1グラム)だった時、生産コストは同233 ドル程度でした。
しかし、2012 年に金価格が同1,677 ドルとなった時には、同970 ドル程度になっていました。つまり、掘り出すコストを決める物価の水準が金価格を下支えしていたようなのです。
現時点で鉱山会社の総コストは、総生産コストに間接費用などが加わり、同1,200~1,300 ドル程度が想定されます。つまり、金価格が上がるからインフレになるという因果関係は乏しいのですが、金を生産する限界コストが金価格を決定するといった長期的なメカニズムは働いているといえそうです。
それゆえ、金価格が同1,000ドル以下に突然値下がりするとは考えにくく、生産コストが下支えると期待できるのです。