はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ

今回の相談者は、勤務先に退職制度がないため老後資金に不安を抱えているという30代の共働き夫婦。漠然とした老後の不安を解消するには、いくらもらえるのかを明確にすることが大切です。FPの平野泰嗣氏がお答えします。

現在、夫と子ども2人の4人暮らしです。夫婦共働きですが、昨年マイホームを購入したため、あまり貯金がありません。これから、住宅ローンの返済に加えて、子どもの教育費など家計支出が増えますし、老後の生活費も準備しなければなりません。今年送られてきた「ねんきん定期便」を見ると、夫の年金額は、65歳から約65万円、私の年金額は55万円と表示されていて、2人合わせても120万円です。世間では、老後資金2000万円必要と言われていますが、勤務先には十分な退職金制度がなく、年金だけでは老後の生活資金は足りません。どのくらいのペースで貯金していけば良いのでしょうか。


<相談者プロフィール>
・女性:35歳・会社員、既婚(夫:35歳・会社員)
・子ども(2人):長男7歳(小学校)、長女5歳(保育園)
・ボーナス込みの額面年収 夫650万円、妻400万円
・これまでの加入実績に応じた年金額:夫65万円、妻55万円(ねんきん定期便より)
・現在の貯金:300万円


平野: 相談者様のように、老後に対して不安を感じている人がほとんどです。でも、よくよく聞いてみると、「年金が減らされる」とか、「年金だけでは老後の資金が足りない」など、“年金がいくらもらえるかわからない”ということが最大の要因のように思います。

そこで今回は、老後の不安を解消するための第一歩である、年金額の目安を計算する方法を紹介します。

50歳未満と50歳以上とでは異なる「ねんきん定期便」の様式

将来の年金額を知る手がかりとなるのは、毎年送られてくる「ねんきん定期便」です。毎年送られてくるけれども、「見方があまりよくわからない」という人が多いです。

ねんきん定期便は、50歳未満の人に送られてくるものと、50歳以上の人に送られてくるものとでは様式が異なります。50歳未満の人の場合は、これまでの年金加入実績に基づいた年金見込み額が表示される(将来、保険料を支払う分は加味されていない)のに対し、50歳以上の人の場合は、現時点の収入で60歳まで働いたと仮定した場合の年金見込み額が表示されています。

したがって、相談者様の場合、20歳から就職するまでの間に国民年金保険料を払った分と、就職して厚生年金に加入した分のこれまでの加入実績に応じた年金額が、ねんきん定期便に表示されています。つまり、相談者様ご夫婦の2人の年金額の合計が120万円というのは、現時点(20歳から35歳まで)の年金額ということで、これからの加入実績(35歳以降)によって増えるものなのです。

これからの年収で年金額はどのくらい増える?「年金額簡易計算法」

相談者様のような会社員の場合、厚生年金に加入しています。厚生年金に加入していると、65歳から老齢基礎年金(国民年金に相当する部分)と老齢厚生年金(就業実績に応じて支給される部分)の合計額がもらえます。

【老齢基礎年金の増加金額の目安計算】

厚生年金に加入していると、国民年金に加入していることになっているので、厚生年金保険料を納めている場合は、もらえる年金額が増えます。増加する老齢基礎年金額の目安は以下の通りです。

19,500円×今後の勤続年数(加入可能年数40年)

相談様の場合、夫婦ともに35歳で、仮に60歳まで正社員として働くと仮定した場合、以下の通りになります。

夫: 19,500円×25年=487,500円
妻: 19,500円×25年=487,500円
夫婦合計の老齢基礎年金増加額= 975,000円

【老齢厚生年金の増加金額の目安計算】

老齢厚生年金は、収入に応じて負担した保険料に対して年金額が決まります。本当は、複雑な計算なのですが、大まかに計算する場合、以下の計算式を用います。
(※年金額をおおまかに計算するための計算式で、将来の年金額を保障するものではありません)

5,500円(※1)×加入期間中の平均年収の百万円の単位(※2)×今後の勤続年数(70歳まで)
※1 より正確にということであれば、5,481円を使用
※2 例えば平均年収550万円の場合は「5.5」とする

相談者様の場合、仮にご主人様、相談者様ともに現在の年収と変わらず60歳まで働いた場合、以下の通りになります。

夫: 5,500円×6.5×25年=893,750円
妻: 5,500円×4×25年=550,000円
夫婦合計の老齢厚生年金(報酬比例部分)増加額= 1,443,750円

現在と同じ収入で、ご夫婦で60歳まで働いた場合、老齢基礎年金と合わせて、2,418,750円増加する見込みになります。したがって、ねんきん定期便に記載されている、これまでの加入実績に応じた2人の年金額120万円に、60歳までのこれからの加入を見込んだ年金額約242万円を加え、362万円が夫婦合算の年金見込み額となります。

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