はじめに
いきなり今日のおすすめを聞くのはNG
ーでは、質問力はどう鍛えればいいのでしょうか。
もちろん、いきなり場面に適した質問を上手にできるわけがありません。質問を適切にできる人は、普段から質問の仕方がうまいものです。たとえば、友人との会話や店員さんとのやりとりなどでも、質問を上手に使いこなしています。
要するに、日常のプライベートな場面でも、「リハーサル」のつもりで意識して質問をしましょうということです。とくに「自分はこう思うのですが、あなたの意見はどうですか?」という質問が有効です。
たとえば、初めて入った居酒屋で開口一番「今日のおすすめは?」と聞く人がいます。これはあまりよい質問の仕方とはいえません。「辛口のお酒が飲みたいのですが、今日のおすすめは?」「こちらはお魚が美味しいお店みたいですが、名物は何ですか?」というように、あらかじめ自分の手持ちの情報や希望を整理してから質問するのが鉄則です。
日ごろから無意識に「おすすめは?」と、深く考えることなしに質問していると、相手にゆだねる発想になりがちです。質問力を上げたいのなら、無造作に質問しないように心がけましょう。また他の人の質問を見聞きしたときに「この表現はいいな」と思うものがあったらメモをして、自分でも使ってみるようにするといいですね。
質問する時の「呼びかけ」が地雷に!?
ー松本さんが質問をするときに気をつけていることは何ですか?
細かいことなのですが、相手に呼びかけるときの“敬称”には注意しています。たとえば、お医者さんを前にしたセミナーでは、必ず呼びかけに「○○先生」とつけます。「〇〇さん」が普通じゃないかと思われるかもしれませんが、意外とこうした細かいことが大きな地雷になる可能性があります。他にも、「お父様」「奥様」「お兄さん」「お姉さん」……など、年齢による微妙な使い分けも気をつけています。
呼びかけから、質問が始まっているともいえます。だから質問の形だけちゃんとすればいいと思っていると、最初の段階でつまづいてしまうかもしれません。ちょっとしたことですが、気を配るといいですね。
ー「やってはいけない質問」はありますか?
基本的に誰にでも、プライドがあると思うんですよ。立場やメンツですね。そうしたことを考えると、やってはいけない質問の代表はやはり「○○って知っていますか?」と聞くことです。知らない場合に「何ですかそれは? 知りません」とはなかなかいいづらいですし、知らないとはいえない立場の人もいます。中には自分を試しているのかと悪くとらえる人もいるでしょう。まさに「地雷を踏む」質問だといえます。
「聞いたことがあると思いますが」とか「ご存知かもしれませんが」と濁すならいいのですが、そのものを知っていますかと聞くのはデリカシーに欠ける人だと判断されてしまうので気をつけた方がいいですね。
ーこの人は質問が上手い!と思う方はいますか?
そうですね……、以前、古舘伊知郎さんが司会のテレビに出演させていただいたことがあります。テレビだと台本があって、大体その通りに進めていくのですが、古舘さんは「それって○○ということですか?」などと突然台本にない質問をしてくる。司会者として、その人の知識やアドリブ力を引き出したり、時には感情を揺さぶる質問をして本人の素を出させる質問力には脱帽しました。本当にお上手でしたね。
また、古舘さんとは違ったやり方で質問が上手いなと思うのは、阿川佐和子さんです。トーク番組でゲストの方とお話ししているのを拝見していると、どちらかというと「話を聞く」ということを大切にされていて、相手のテンポに合わせた質問をされるのが上手だと感じました。
「あなたのお話を聞いたうえで、こういう質問をしますよ」と相手を安心させながら、答える準備の時間をきちんと与えていますよね。相手が落ち着いて答えやすい雰囲気作りをすることで、引き出せる答えもあるはずです。