はじめに
大手書店チェーンの明暗はどこで分かれたのでしょうか。書店大手の文教堂が6月28日、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請しました。
持株会社の文教堂グループホールディングスは上場していて、2018年8月期決算で債務超過に転落していました。2019年8月期末時点で債務超過を解消できないと、上場廃止になるところだったのですが、ADRによって上場を維持できる可能性が出てきました。
一方、同じく老舗の書店チェーンである丸善の業績は堅調に推移しています。両社の明暗を分けたものは何だったのか、ひも解いてみたいと思います。
店舗閉鎖に伴う損失が膨らむ
まずは過去の文教堂の業績をたどってみましょう。リーマンショック前の2008年8月期までは、何とか500億円台の年商を維持していました。しかし、リーマンショックを境に、異変が顕在化します。
売上高は右肩下がり、本業の儲けを示す営業利益は2013年8月期以降、ほぼ赤字が定着していましたが、より深刻だったのは当期純損益です。業績不振が原因となって、店舗の減損や不採算店舗の閉店に伴う損失処理などで特別損失が膨らむことが常態化しました。
原因は言うまでもなく、グループの中核会社である文教堂の業績不振です。出版不況が一段と深刻化し、町の本屋さんが次々と姿を消していますが、大手書店チェーンの文教堂も例外ではありませんでした。
新規出店も行っていましたが、不採算店の閉鎖がそれを上回っていました。直近の2018年8月期の年商は273億円。10年前の半分近くにまで減っています。
閉店に伴う什器備品の除却や、不採算店舗の減損処理などで最終赤字が続いたため、2006年8月期に32億円あった純資産はみるみる減少。2018年8月期には、ついに債務超過に転落してしまいました。
丸善も書店事業は苦戦
一方、丸善はどうでしょうか。同社も持株会社の丸善CHIホールディングスが上場しているのですが、中身が文教堂とはだいぶ違います。文教堂グループホールディングスの収益は文教堂1社がその大半を稼いでいますが、丸善は違います。
文教堂と同じ書店事業(オンライン書店を含む)以外に、大学など文教施設向けの卸売り事業、それに図書館のサポート事業という2つの事業を加えた、3本柱の体制を敷いています。
現在上場している丸善CHIホールディングスは、かつて上場していた丸善とは法人格が異なる別の会社。2010年2月に、丸善と図書館運営受託大手の図書館流通センターを経営統合した際に誕生した持株会社です。ここに書店大手のジュンク堂が合流したのが、1年後の2011年2月です。
直近の2019年1月期の売上高は1,770億円で、各部門の内訳は書店事業が740億円、文教事業が593億円、図書館サポート事業が264億円と、書店事業が4割を占めています。営業利益は文教事業が32億円、図書館事業が20億円。書店事業はぎりぎり黒字で、その前の期までは4期連続で赤字でした。
つまり、今の丸善の好調は文教事業と図書館事業によるものなのです。