はじめに

6月末のG20(20ヵ国・地域)大阪サミット閉幕後、半年ぶりに行われた米中首脳会談で、米国による対中制裁関税第か4弾の発動が先送りされ、金融市場に安心感が広がりました。加えて、米国企業による中国通信機器大手ファーウェイへの部品販売を一部容認する姿勢も示され、テクノロジーに関する米中覇権争いも落ち着くのでは、との期待が膨らみました。

ここで注意したいことは、米中の貿易摩擦とテクノロジー摩擦(テック・ウォー)は、同じ摩擦でも問題のポイントが異なる点です。今回はその違いについてお伝えしたいと思います。


貿易摩擦とテック・ウォーの違い

米中貿易摩擦で米国が問題視しているのは、知的財産権保護の不十分さ、国営企業優遇、補助金供与など中国の不公正です。対してテック・ウォーは、中国企業による米国企業に対する技術移転の強要、米国企業買収時の不適切な技術移転など、安全保障上の問題を指摘しています。

米国では、中国製の通信機器を使うことに安全保障上の問題があるという考え方が強まっています。その意味で、テック・ウォーは軍事・ハイテクの安全保障を含む覇権戦争といえます。

テクノロジーのほとんどの分野で米国が圧倒的に強いのは間違いありません。しかしながら、中国が不正・不適切な手段でハイレベルな情報技術を集め、米国を抜き去る事態だけは避けたいと思っています。だから、世界の製造大国を目指すという政策「中国製造2025」を目の敵にしているのです。

公正な技術競争であれば仕方ないのですが、そうでなければ関税や取引禁止などで制御せざるを得ない、といった考えが米国のテック・ウォーの背景にあると考えられます。

中国が5G(第5世代移動通信システム)などで強みを持つといわれますが、まだ技術立国とはいえないようです。中国を代表する上海/深圳CSI300指数の業種構成比をみると、300銘柄のうち情報技術関連は34銘柄で、指数全体の時価総額比率では10%もありません。

上海/深圳CSI 300指数の業種別構成比
上海/深圳CSI 300指数の業種別構成比(6月28日現在)

これは、米国S&P500指数に占めるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の大きさや影響力に比べれば、小さいと思います。ファーウェイは世界的なブランド力と通信関連技術で高いシェアを持っていますが、中国全体からみると異例の存在です。だからこそ、両国ともこの会社の扱いにこだわっているのです。

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