はじめに

IoT(もののインターネット)や電気自動車・ハイブリッド車の普及により、高容量・ハイパワーな次世代電池へのニーズは日増しに高まっています。世界経済の減速懸念、地政学的リスクの高まりなどとは関係なく、研究開発は着実に進んでいます。

そんな中で、次世代電池として最も注目される全固体電池について、紹介したいと思います。


世界的に開発競争が激化

全固体電池は、自動車向けと民生向けの両方の用途で開発が進められています。自動車向けについては、一昨年、トヨタ自動車が世界に先駆け市場投入したいと発言したことで一躍注目を浴び、その後も改良が続いています。

一方、民生向けは実用化に向けた動きが加速しています。TDKやFDK、村田製作所がすでにサンプル出荷を始めたほか、太陽誘電も開発中で、来年にはサンプル出荷を出荷する予定です。

自動車向け全固体電池はまだ試作段階で、サンプル出荷にはもう少し時間がかかりそうです。しかし、欧州や韓国に加え、中国メーカーも参入するなど、実用化に向けた研究開発が世界的に熱を帯びてきています。


全固体電池の市場予測

具体的には、独・フォルクスワーゲンが全固体電池開発の米ベンチャーに110億円を出資したほか、韓国のサムスン電子が正極に三元系材料、負極にリチウムを使い高容量の全固体電池を製造したと発表しています。中国では小規模ではありますが、生産設備への投資を決めた会社があるようです。

トヨタとパナソニックは共同開発を加速へ

自動車向け全固体電池が注目されるきっかけを作ったトヨタ自動車も、正極材料や負極材料をコーティングしたり、固体電解質層を薄膜化させたりして着実に電池性能を向上させており、昨年には小型電気自動車での走行実験に成功しています。

同社はこのノウハウを、2020年末までにパナソニックと設立する角形リチウム電池の新合弁会社(JV)に移管し、開発を加速させる方針です。なお、このJVの出資比率はトヨタ自動車が51%、パナソニックが49%で、当面は自動車向け角形リチウム2次電池の開発・改良・生産が主要業務となります。

全固体電池が優れるのは、リチウム2次電池と比べて、1、発火しにくく、2、高容量化が容易で、3、急速充電が可能なことです。民生向けの量産が始まりましたが、2020年代に向け自動車向けについても実用化に向け開発が加速する見通しです。

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