はじめに
米欧中銀の緩和姿勢のその先
先に挙げた(2)について、筆者の考えを説明します。2019年に「世界的な金融緩和競争」が始まっていますが、同年のFRBの政策判断は適切であるため、金融緩和政策が経済を再び刺激し始める可能性が高いとみています。つまり、世界的な金融緩和競争は世界経済を復調させる、が筆者の考えです。
金融緩和に加えて、財政政策も成長率を押し上げるとみています。米国では2021年まで歳出を拡大させる方針について、トランプ政権と議会が合意に至り、財政金融政策の双方が成長率を高める方向に作用します。
また、欧州については今後の政治情勢次第ですが、緊縮的な財政政策は和らぐ方向にあります。2020年までに想定される米中貿易停滞による景気下押し圧力のかなりの部分が、米欧などの緩和的な金融財政政策によって相殺される可能性が高い、とみています。
この筆者のシナリオが正しければ、米国を中心に株式市場の上昇基調は、あと2、3年程度は続く可能性があります。ただ、今後半年の時間軸、つまり2019年後半の米国の株式市場に関しては、軟調に展開する可能性が高いとみています。
株式市場はどう動く?
というのも、2019年のS&P500など米国株は年初から約20%上昇していますが、これを牽引したのは、FRBが大胆に金融政策を利下げ方向に転じたことでした。
先述しましたがFRBの金融緩和などによって、米国を中心に世界経済の減速は緩やかにとどまる、と筆者は考えています。一方、金融市場では、FRBによる利下げはかなりの程度織り込まれました。このため、2019年後半は金融緩和期待が、米国の株高を後押しする可能性は低いでしょう。
31日のFOMC後のジェローム・パウエル議長の記者会見において、追加利下げに積極的ではないと受け止められたため、米国株市場は大きく下落しました。今後FRBの金融政策への思惑が揺れ動くため、高値圏で推移している米国の株式市場がやや調整する場面が増えると見ています。
<文:シニアエコノミスト 村上尚己>