はじめに

有資格のスタッフが手助けする意味

そして、2011年から東京や神奈川など地方を越えて中小企業が賛同し加盟し、2018年には24都府県26社に広がりました。各地に散らばることで事業所同士が商圏を侵さず、情報交換などで協力し合うことができるそうです。

ヘルパーなどの資格を加盟の条件にした理由を、宮髙さんはつぎのように語ります。
「資格があれば、例えば右脳梗塞を患われた方が左半身マヒという後遺症が出るという知識があるので、ベッドの移動をする時、どの向きに置かないといけないのかが理解できる。スタッフ全員が有資格者でなくても、資格を持っているスタッフが伝えることもできます。また、資格があることで、ケアマネージャーさんもご家族も安心して任せてくださいます」
  
加盟する事業所が集まり、研修を通してサービスの質を一定に維持したり、情報交換でサービスの向上に努めたりなどの活動を行ってきましたが、2019年6月1日に「一般社団法人住むーぶ全国協議会」を設立しました。

「地域のひとり暮らしの方の生活の困りごとって、行政の人たちも把握してないこともあるんですよ。でも、いち企業として行政に何か提案しても、利益誘導につながると思われてしまいます。一般社団法人という非営利組織を作ることで、行政に私たちの『高齢者の住環境の改善』という理念を理解していただき、地域のことを一緒に考えるプラットホームを作りたいんです」

これから一般社団法人として、高齢者の住まいに関する困りごとについての情報の収集や調査分析、行政に向けての情報発信などに取り組んでいくとのことです。

北は東北、南は九州まで加盟する事業者が広がった同社団法人ですが、宮髙さんは現状に満足することなく、2025年には50社の加盟を目標としています。受注数は今年、全国で1,038件の受注でしたが、5年後には1万件を目指すそうです。

引っ越しにほかに「片付けサービス」も

さらに、新たに全国に展開しようとしている事業があります。それは「住むーぶエバー」という高齢者の住居の片付けサービスです。
「現在、政府は施設の入居よりも、在宅での介護を推奨しています。だから、高齢の方が在宅で長く健康に生活できるお手伝いができないかと考えました」

介護が必要になる要因は脳卒中、認知症、高齢による衰弱、認知症についで、骨折・転倒が続きます(高齢社会白書)。高齢者の家の片付けは介護の領域ですが、ヘルパーが生活援助のために入れる時間が限られているため、ヘルパーが来ていても散らかっている家が少なくないと宮髙さんはいいます。

○○○片付け前(左)と片付け後(右)

そんな環境では転倒・骨折につながりかねないため、自宅の整理整頓による予防のためにサービスを開始したとのこと。引っ越しと片付けではサービス内容は違いますが、高齢者の住環境の整備という点では共通しているようです。

現在セイコー運輸では「整理収納アドバイザー」の資格を持つ社員が、片付け方についてのセミナーを開催し、散らかりにくい収納のコツなどを伝えます。高齢者が自分で片付けをする際に依頼を受けて、自宅を直接見てのカウンセリングや片づけのプラン設定、そして重いものを運んだり、不用品を引き取ったりなどを、1時間5,000円から対応しています。お客さんは比較的年齢が若めの高齢者がほとんどで、半年に1回など定期的に依頼するそうです。

今後は全国の「住むーぶ」加盟事業者に資格取得を勧めるともに、実践を通して独自の検定試験を作って、2025年には一般社団法人の収益事業を目指しているとのこと。
「中小企業が地域を支えている。地域に関わることは中小企業が取り組んでいかないといけない」と自負する宮髙さん。事業の拡大や業界の発展に努めつつ、良い評判も悪い評判も立ちやすい、地域というフィールドで、日々サービスの向上を図っていくそうです。

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