はじめに

理由はアメリカファーストにあり?

今、ひとつ明らかなことは、トランプ旋風の本質が「アメリカファースト」だということです。

保護貿易によってアメリカ国内の雇用を増やし、アメリカ企業を守るということがトランプ大統領の公約です。ですから論理的には、トランプ相場によってアメリカ企業は日本企業よりも企業価値を上げるということ。

実際、トヨタ株が下げた理由はトランプ大統領にあります。メキシコに工場を建設しようとしたトヨタを、ツイッターで名指し非難した話は有名ですが、最近も製造業トップをミシガン州に集めた会議において、トヨタ批判を行いました。

トヨタはトランプ大統領に対して、「我々はAIの開発に1兆円を投資する」と猛アピールしたのですが、トランプ氏はそれを遮って、「ここ(ミシガン州)に工場を建てろ」と迫りました。

生産効率が悪くて古臭い、今では誰もが尻込みするような工業地帯に、工場建設命令を出したようなもの。

トランプ政権にとっては、仮に日本企業が困ったとしてもアメリカに雇用が生まれることの方が大切ですから、日本株の象徴であるトヨタがマイナスになるということは理解できます。

そして、それだけではないということも忘れてはいけません。日本株の上位の面々の株価がさえないもうひとつの理由、それはグローバル市場でさらに成長するだけの余力がないと見られてしまっていることです。

グローバルなアメリカの大型株

アメリカ上位の銘柄を眺めると、株価の上昇と同じようにビジネスも拡大しそうだというイメージがすぐに浮かびます。世界中でスマホやタブレットの販売が増えれば、アップル、グーグル、マクロソフトの売り上げが増えることは容易に想像できるでしょう。

バークシャーハサウェイが投資しているのもコカコーラ、ジレットといったグローバルに名前が知られた消費財メーカーですので、グローバル市場でアメリカ企業が優遇されればその恩恵を世界中から得られそうです。

さらに、アマゾンドットコムは日本市場を攻略したように、世界各国でもナンバーワンのECビジネスを展開しています。世界最大級の小売として伸びる一方で、その利益はアメリカだけが吸い上げて、各国には税金もまったくといっていいほど落としていないのです。

世界を狙う存在になれるか

日本企業の最大の課題はここにあると言われています。アメリカ企業の上位銘柄はすべて世界市場の覇者ポジションを狙える銘柄ばかり。それに対して日本はどうでしょうか。対抗できるのはトヨタだけでしょう。

これから先、ソフトバンクがIT界の投資で成功し、より伸びていくことに期待したいですが、世界をリードするというよりは、「日本のIT企業としては比較的期待できる」というのがグローバルな投資家から見た正直なイメージでしょう。

NTTドコモや三菱UFJフィナンシャルグループ、ソフトバンクといった巨大企業がさらに成長するとすれば、それは世界市場が相手であるという理由以外は考えにくい。

日本のトップ企業は、「世界を狙えない存在である」と投資家から見られている。ここが問題です。

アメリカ企業の多くは、当然のように世界で業績を拡大することを前提にビジネスを行っています。トランプ相場において日米の株価の差が開き始めた真の理由は、ここにあるのかもしれません。

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