はじめに

世界各国で金融緩和の動きが強まっています。7月18日には、インドネシアも約2年ぶりの利下げを実施しました。政策金利は6.0%から5.75%に引き下げられています。ここ数年のインドネシアは景気低迷が長期化する中で、通貨ルピアも弱含みで推移していましたが、直近はようやく相場も安定してきました。

特に昨年インドネシアで立て続けに実施された利上げは、ルピア相場の安定を主目的としたものでしたが、ようやく景気重視に軸足を移しつつあるといえるでしょう。4月に実施された大統領選挙を経て、2期目がスタートしたジョコ政権にとって初めての政策転換です。

7月23日にIMF(国際通貨基金)が発表した「エコノミックアウトルック」では、世界全体、国別ともに、成長率予想の下方修正が目立ちました。世界的に米中問題、日韓問題などさまざまな難題が山積する中で、今後のインドネシア・ジョコ政権の課題や注目ポイントなどについて考えてみたいと思います。


「2045年に世界4位の経済規模へ」

第2期政権がスタートしたジョコ政権は6月、「インドネシアは独立100周年に当たる2045年には、経済規模で世界第4位になる」という壮大な計画を発表しました。同時に、1人当たりGDP(国内総生産)については、現在の3,871ドル(日本貿易振興機構統計)から2万ドル超にまで押し上げる、という長期計画です。

水準から見て決して容易に達成できる目標ではありませんが、独立100周年にあたる2045年という節目に対するインドネシア政府の強い思いが感じられます。

なお、ジョコ第2期政権の任期は2024年までの5年間ですが、過去のパターンでは任期後半には次期大統領選挙に向けた各党の準備が始まり、現政権は実質「死に体」となりやすい傾向があります。その点を考えると、実質、任期前半の2021~2022年ころまでが勝負といえます。

この壮大な長期計画を実施するために、インドネシアが直近進めているのが産業高度化です。世界で戦えるような輸出競争力を持つ製造業を育成しようと、「Making Indonesia 4.0」というスローガンを掲げました。これまでのインドネシア経済は豊富な資源と旺盛な国内消費に頼ってきましたが、高付加価値産業育成の重要性を意識しているといえます。

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