はじめに

広がるシェアリングエコノミー

このシェアリングエコノミーの概念は、使っていない資産であれば車だけでなくほかの分野でも使えることがわかりました。

1台の自動車を共に所有し、使いたいときに使いたい人が使うというカーシェアのビジネスは1987年ごろにスイスでスタートしたと言われています。そして、ウーバーとほぼ時を同じくして始まったのが、エアビーアンドビー(Airbnb)、いわゆる民泊を提供するサービスです。

エアビーアンドビーの創業者は、カーシェアビジネスを見て「自宅にバックパッカーを泊めるサービスを提供したら流行するんじゃないか」と考えました。そこで、事務所のソファの写真をインターネット上にアップして、一泊数千円で泊まる人がいないかと募集してみたところ、反応がいいことに気づきます。

こうして民泊がスタートしました。ホテルのようにちゃんとしていなくてもいいから、手軽に安く泊まれる場所を探したいという人は多かったのです。

ウーバーもエアビーアンドビーも、車や宿を提供する人たちは「使っていない資産を、使っていない時間に提供するのであれば、もともとはタダだったのと同じだから少しだけでもお金が稼げればいい」という割り切りで価格を設定します。そのため価格は、タクシーやホテルといったプロよりも安くなる傾向があります。

サンフランシスコからシリコンバレーまで移動する場合、タクシーだったら160ドル(約1万8,000円)はかかるところを、ウーバーを使えば50ドル(6,000円弱)程度で運んでくれる。こうして、ウーバーやリフトは流行したのです。

規制が少ない駐車場シェア

さて日本では、配車サービスも民泊もタクシーやホテルの既得権を奪うということで、法の問題などもあり、海外のシェアリングエコノミーサービスが簡単にはサービスを開始できていません。

そのようななかで比較的、既得権を持っている人からの抵抗が少ないとして注目されているのが駐車場です。

私の実家の近くにメガバンクの支店があるのですが、そこの来客用駐車場は15時に閉鎖されて以降、ガラガラの状態で翌朝まで放置されています。ところがその立地は観光名跡の入り口参道付近にあって、いつも観光客の駐車場が足りない状態が続いています。

東京でも渋谷や新宿などのオフィスビルの駐車場は土日はがらがらですが、街は買い物客でにぎわっています。考えてみればムダな事業資産です。

マンションの月極駐車場も空きが目立つ場合、時間貸しをすれば管理費や修繕積立金を値下げすることができるかもしれません。家主が通勤で車を使うような場合は、昼間は、その場所も時間貸しできるかもしれないですね。

後発が先行企業を追い抜く可能性が生まれてきた

そんなことから使っていない時間の駐車場をシェアリングエコノミーの概念に則って提供しようというのが冒頭の動きで、三井不動産や楽天に続き、リクルートまでも参入を表明しました。

さて、ここでひとつおもしろい発見があります。アメリカの配車サービスの世界で先行していたウーバーを後発のリフトが急激に追い上げているのです。

もともとウーバーのようなサービスは一社がほぼマーケットを独占してしまうため、後発企業がなかなか入れないと言われていました。そのため、ウーバーは上場する前から時価総額が一兆円を超えるような「ユニコーン銘柄」企業として有名になったのです。

ところが、そこに死角があった。グーグルがグーグルマップでのカーシェアの検索サービスを始めたところ、例えばサンフランシスコのホテルからゴールデンゲートブリッジに行きたいと検索すると即座に道順と共にウーバーとリフトのカーシェアのリストが表示されるようになりました。

その結果を比較したところ、どうもリフトの方が安い。きっと後発ということもあって、同じ距離でも安くサービスを提供しているのでしょう。そのため、私も今回の出張ではリフトを選ぶ場面が激増したのです。

私だけでなく同様に、その検索結果を見た人の多くがリフトを使うようになる。そして絶対的と思われていたウーバーの需要が一気にリフトに流れ出してしまっているのです。

駐車場のシェアサービスでも同じように、グーグルマップ上で有料駐車場もシェア駐車場もすべてが比較できるようになれば、後発参入でもトップになれるかもしれません。今後もシェアリングサービスの分野には、新規参入が相次ぐ可能性が高い。駐車場サービスにリクルートが新規参入するというニュースは、そんなことを予感させてくれました。

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