はじめに

ここ最近、女性の不利益にまつわる問題に声を上げる人が増えています。職場でのヒール、パンプスの強制に抗議する社会運動「#KuToo(クートゥー)」や社会学者の上野千鶴子氏による東大入学式の祝辞がニュースで大きく取り上げられ、女性の進学差別や就職差別を赤裸々に描いた韓国のベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』は日本でも大ヒットしました。

そんな女性の不満や悩み、苦しみを「女のモヤモヤ」として取り上げ、対談した書籍『女に生まれてモヤってる!』が、静かな話題を呼んでいます。

著者は数々の女性誌で連載を持つ人気コラムニストでラジオパーソナリティーのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さん。全く違う経歴、職業を持つお二人が対談に至った経緯や本を通して伝えたかったことについて伺いました。


他人が思う「女らしさ」に合わせなくていい

――この本が誕生したきっかけを教えてください。

中野信子さん(以下、中野さん): スーさんと2人でやりとりしていたLINEの内容が面白かったんですよ。1時間くらい、トイレに行くのも我慢しながら打つこともあって、「この話がここだけで終わってしまうのはもったいない。いろんな人が読める媒体にしよう」と思ったんです。

ジェーン・スーさん(以下、スーさん): ある女性誌に対談として取り上げてもらったのですが、それを読んだ小学館の編集者から「書籍化したい」という話を頂きました。それで、改めて対談をして一冊にまとめました。

――テーマは最初から決まっていたのですか?

中野さん: 「『女って得をしているよね』と言われがちだけれど、本当は損だよね」という話を2人でしょっちゅうしていたんですよ。女に生まれたいという人もいただろうけれど、それはその人の問題であって私の問題ではない。選択したわけでもないのに何十年も女性として生きていかなければならないことについて、改めて語りましょうということになりました。

スーさん: 私と中野さんはタイプが全然違う。だから中野さんの話すことに刺激を感じるし、対談も盛り上がりましたね。


ジェーン・スーさん

――書籍で印象的だったのは、おふたりが37歳という年齢を一つの節目として挙げていた点でした。「年齢的に『女らしさ』が求められなくなったことで、自分に自信が持てるようになった」と。冒頭で、外見的にはきれいであることや清潔感があること、内面的には控えめだったり思いやりがあったりすることが、世間から求められる「女らしさ」ではないかと仰っていましたね。

中野さん: 37歳にこだわる必要はないんですよ。灰になるまで女から降りない人もいるだろうし、それはそれでいいんです。でも、今の社会で、「女であることから下りないとめんどくさいよね」という年齢が30代後半ではないかと思うんです。

スーさん: 今までも女であることに上手くのれた試しはないんですけどね(笑)。でも、私にとって「上手くのれない」ことに罪悪感を伴わなくなったのが30代後半でした。

中野さん: だからといって、この年代になったから女という立場から下りろと言いたいわけではないんですよ。ただ、他人が思っている女性像に合わせる必要はないということは伝えたい。

スーさん: 頭では「世間のイメージ通りの女らしさを演じなくてもいい」と分かっていても、一人だけ逸脱するのは苦手なんですよね、みんな。

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