はじめに

オリンピック、サッカーワールドカップ(W杯)と並んで世界3大スポーツイベントに位置づけられるラグビーW杯。その2019日本大会の開幕が1ヵ月後に迫りました。

ラグビーは球技の中では異質で、タックルなど積極的なコンタクトが許されています。観ていると迫力がありエキサイティングですが、野球やサッカーとは違って小学生がそのままのルールでゲームを楽しむケースは多くありません。ですので、普段は「国民に広く人気」とまではいかないようです。

とはいえ、前回の2015年イングランド大会を思い出してみてください。初戦で五郎丸歩選手の活躍もあり伝統的なラグビー大国である南アフリカに勝利したことで、国民の期待が大いに高まりました。スター選手が現れたり、試合に勝つと国民の人気が盛り上がります。

これまでさまざまなスポーツで日本開催の時に日本代表が活躍してきた歴史を振り返ると、今回のW杯も大いに期待できるでしょう。そこで本稿では、こうしたスポーツを観るために支出するお金と株価の関係を検証してみます。


“観る”or“する”、軍配はどちらに?

今回のポイントは「スポーツを観るために使うお金が増えると株価は高い」という関係です。総務省統計局の「家計調査」で、1世帯当たりの月別“スポーツ観覧料“支出金額を使って調べてみました。

1年を通して見ると、スポーツを観るために使うお金は5月が最も多いようです。これは「気候が良い大型連休でスポーツ観戦を楽しむ人が多い」ことが理由とみられます。そこで、毎月末まで過去12ヵ月間のスポーツ観覧料を合計しました。この前年と同じ月に比べて、どれだけ増えたかを見ています。

グラフ

実は、グラフはちょっと工夫をしています。スポーツを“観る”ために使うお金の伸びから、スポーツを“する”ために使うお金の伸びを引いているのです。

スポーツを“する”ために使うお金は、同じ家計調査から「スポーツ用品」「スポーツ月謝」「スポーツ施設使用料」を合計しました。こちらも月別の季節性があるため、前年の同じ月からの伸び率を計算しています。

この「“観る“-“する“」について特徴的なのは、3ヵ月後までの日経平均株価の騰落と連動していることです。つまり、スポーツを“観る“ことにかけるお金が、”する“ことに比べて多いと、その後の株価が上がるということです。

“観る”が増えると株高になるカラクリ

意外に感じるかもしれません。スポーツをするには、道具をそろえたり、ウエアを買ったりと、お金がかかります。こうした消費の高まりは景気も株価も良いと思えるからです。

しかし、“観る”こともお金がかかります。数千円、場合によっては数万円となる金額なだけに、所得に余裕がある環境でこそ“観る”ことにお金がかけられます。

これにも増して大きな要因は次のようです。

東京五輪といえば、建設やインバウンドなどの経済効果にも期待がかかりますが、今回のラグビーW杯でも、経済効果が注目されています。ラグビーワールドカップ2019組織委員会がまとめた分析では、「経済波及効果は約4,300億円」と予測されています。

日本で開催される国際大会では、いつもよりも多くの人が“観る”ことにお金を使いますし、わが国への経済効果も大きいため、日本経済や株価も好調となることが期待されるのです。

ちなみに、日本代表の活躍などでスポーツを“する”人が増えるでしょうが、たとえば、日本に直接的な経済効果が期待できない海外での国際大会で活躍した場合でも、“する”人が増えることになります。自国開催の経済効果の要因をとらえる意味でも「“観る“-“する“」にすることが良いのかもしれません。

さて、ラグビーW杯、そして来年の五輪と日本代表の活躍が期待されスポーツを“観る”人が増えるでしょう。それに連動した将来の株高も期待されます。

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