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スペイン人がイベリコ豚より「白豚」を多く食べる理由

日本への輸出が増えるスペイン産豚の正体は?

国内のスーパーマーケットなどで目にする機会が増えてきた「イベリコ豚」。イベリコ豚はスペイン産の豚肉なので、「スペインで現地の人が食べる豚はいつもイベリコ豚」と、漠然と考えている人も少なくないかもしれません。

しかし実は、「スペイン産豚肉=イベリコ豚」は必ずしも言い切れない場合もあります。実際、現地では日本の人がイメージする「白豚」を食べる人も多いのです。スペイン在住の筆者がスペイン産豚肉とイベリコ豚の関係をお伝えします。


輸入量が急増するスペイン産豚肉

まず、日本の豚肉の輸入とスペイン産豚肉の関係についてみてみましょう。

イベリコ豚独立行政法人畜産産業振興機構ウェブサイトのデータより筆者作成、以下同

歴史的に見ると、日本にとって一番の豚肉の輸入元はアメリカです。畜産産業振興機構の公開しているデータを見ると、日本が輸入している豚肉の大半がアメリカ産であることや、2013年以降にスペインとカナダから豚肉の輸入が増加していることに気が付きます。

イベリコ豚

スペイン産豚肉の輸入量を変化を見ると、数年間で日本のスペイン産豚肉の輸入量が急増しているのがわかります。例えば、2017年の輸入量は2012年の約3倍です。日本の市場へ本格的に進出したのは本当に最近で、この5年くらいの話なのです。

そして2019年になり、日本のスペイン産豚肉の輸入の動きは加速します。2018年後半に一旦減少したスペイン産の豚肉の輸入が、2019年に再度増加に転じていることがわかります。

イベリコ豚

このスペイン産豚肉の日本進出の動きを決定的なものにしたのが、2019年から発行された日本EU経済連携協定(EPA)です。この協定の発効により、豚肉の関税が3%から2.2%に減少しました。

この協定は、もちろんEUで生産された豚肉すべてに適用されます。しかし、スペインは、他のヨーロッパ諸国より人件費等が安価であるため、関税前の豚肉の価格自体が他のヨーロッパ諸国の商品と比較しても非常に安いのです。そのため、この関税削減の影響は、スペイン産豚肉の一層の価格低下という形で明確に現れました。

こうして価格が低下し、日本のスーパーマーケットなどで手に入りやすくなったスペイン産の豚肉ですが、そのほとんどは「イベリコ豚」と記載されていることに気が付きます。そう、放牧されてドングリで育つといわれるあの黒い豚です。

そんな貴重な豚が、大量に日本に豚肉として入ってきているのでしょうか? 実はここに、スペイン産豚肉=イベリコ豚とは必ずしも言えない、理由が隠されているのです。

「イベリコ豚」って何?

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DNA鑑定によると、イベリコ豚の起源はヨーロッパ系と地中海系、そしてアジア系の3つが掛け合わされたイノシシであることがわかっています 。そして、この豚の肌の色は黒。

正真正銘のイベリコ豚は、スペインイベリコ養豚協会という公的機関に登録され、その飼育や繁殖方法まで厳密に管理されています 。そのため、基本的にはこの養豚協会が認めた豚だけが、正式な「イベリコ豚」ということになります。

イベリコ豚は、生まれた直後から体重が23kgくらいに成長するまで、母親のお乳を飲んで成長します。しかし、もともとは同じイベリコ豚でも、その後の成長過程の飼育方法により、次の3種類のランクに分類されます。

1.ベジョータ

基本的にドングリの実と自然のなかでの動植物を食べることで、その体重を46kg以上増加させた黒豚 。成長が遅いため、生後14ヵ月から出荷可能 。しかし、一般的に豚は体重が200kg近くになるまで製品に加工されず、ベジョータの場合この体重に達するまでに生後22~28ヵ月かかる。広い場所で放牧されて育つ。

2.セボ・デ・カンポ

放牧され、自然の穀物やハーブなどを餌として与えられていたイベリコ黒豚。ベジョータと比べると成長が速いため、生後12ヵ月以上から出荷可能。放牧に近い状態で飼育されていることが多い 。

3.セボ

放牧されずに、人工飼料を食べて育ったイベリコ黒豚。3種類の中で最も成長が速いため、生後10ヵ月から出荷が可能。

ベジョータ、セボ・デ・カンポ、セボの3種類はイベリコハムの分類方法として、ご存知の方も多いのではないでしょうか。前述のように「ベジョータ」は育てるためのコストが高いため、その商品価格も高い傾向があります。例えば、サラマンカの市場でのイベリコハム一本当たりの価格は「ベジョータ」は約40ユーロ/kg、「セボ・デ・カンポ」は約25ユーロ/kg、「セボ」は約20ユーロ/kgです。

そして、イベリコ豚を生産している主な地域は、スペインの中でも比較的夏の気温が高いところに集中しています。例えば、スペインの4大イベリコハム生産地として良く知られる次の地域は、すべてスペイン中部から南部に位置し、夏は気温が40度を超えることも珍しくありません。

・サラマンカ県のギフエロ
・ウエルバ県のハブーゴ
・コルドバ県のペドロチェス
・エストラマドゥーラ地方

このようにイベリコ豚は日本でも有名です。しかし、スペインから輸出されているスペインの豚肉は、イベリコ豚だけではありません。

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