はじめに

最安値航空券に潜んでいた危ない罠

ところが、後から考えてみると、実はこれはけっこう危ない行動だったかもしれません。

私は経営コンサルタントなので、その当時、ギリシャという国がどういう状況だったのかをよく知っていました。国自体がデフォルトの危機を起こし、EUの中で大問題となっていました。

そのギリシャの旅行会社であれば、国情次第で決済不能になるといったことが起こりかねません。もしかすると、空港に着いたら「旅行会社から代金が振り込まれていないので航空券が発券できません」と言われてしまうリスクをはらんでいたわけです。

なにしろ相手はギリシャの旅行会社。もし経営破綻しても、地理的にも言語的にも、それ以上、追求しようがなかったかもしれません。

さて、今回のような事件が起きると、消費者は一転して保守的になるかもしれません。航空券を買うなら「ANAから直接買うのがいい」とか、海外旅行は「JTBで注文しよう」という大手志向の消費行動が増える可能性もあります。

このような空気のなか、H.I.S.があるサービスを発表しました。同社が新しくオープンした国内航空券比較購入サイトで購入した航空券について、欠航や6時間以上の遅延が起きた場合に1万円のお見舞い金を出すというのです。

お見舞い金サービスが持つ意味

国内出張の場合も、ANAやJALではなく、LCC(格安航空会社)を使うと航空券が安くなります。しかし一方で、旅行客はあるリスクを抱えていました。

実際には、それぞれの航空券や会社によって条件が違いますが、以前あるLCCを購入した際の条件では、航空機が欠航になった場合、航空券代金が全額払い戻しされ、それでおしまいということでした。

自分が払ったお金は戻ってくるのだから問題ない、と思うかもしれませんが、この条件でなにが困るかというと、代わりの便に乗ることができないということです。

例えば、東京から福岡へ出張するとします。ANAが1万2,000円、LCCが9,000円とLCCの方が3,000円も安いとしましょう。これはよくあるケースです。ところが当日になって、LCCの機材が故障してフライトが欠航になってしまう。その場合、予約客には9,000円が戻って来ることになります。

では、どうやって出張先に行けばいいのか? 客は改めて別の便の航空券を買わなければならないのです。もしこれがANAの欠航であれば、スタッフが手分けして別便に振り替えてくれますが、LCCは別便には振り替えてはくれません。別便には別便で、ほぼ満席の予約客がいるからです。

そして、なんとか自力で当日のフライトを探しても、結果、当日券を買うことになるので、下手するとANAやJALの正規料金でしか乗れず、5万円も払わなければいけないことになります。出張をキャンセルするという手もありますが、その場合の帰りの航空券代は帰ってきません。

こんな理由から出張でのLCC利用を控えていた人にとっては、お見舞い金が出るという今回のHISの発表によって、うれしい選択肢が増えたかもしれません。

また、それ以上に、インターネット上のサービスにおいて、今後、補償がビジネスの重要な要素となるかもしれない。そんなことを考えさせられる、一連の事件でした。

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