はじめに
政府が行ったさまざまな調査では、「女性が活躍する企業は業績や株価パフォーマンスが良い」という結果が示されています。
たとえば、内閣府の「女性の活躍状況の資本市場における見える化に関する検討会」の資料では、米国企業を対象とした分析を紹介して、「女性役員比率が高い企業の方が利益率が高い」と説明しています。
経済産業省も「やや古くから女性が活躍している企業の業績が良い」という報告をしています。2003年の男女共同参画研究会の報告では、女性が活躍できる企業は固定観念にとらわれない社風、仕事の実績を正当に評価できるような人事の仕組みがあるから、それが結局は企業の成長につながる、とあります。
仕事の成果が上がっても性別などで偏った評価が行われるなど、正当な評価ができない会社では従業員の“やる気”も下がってしまいます。女性が活躍できる企業は、公平で妥当な評価ができるような企業風土があることの表れ、と説明されています。
そう考えると、確かに女性が活躍できているような企業は業績も良く、株価も上がると期待されます。学術の世界では、これを「企業固有風土仮説」と呼ぶようです。そこで、今回は「女性役員比率」を使って、株価や業績との関係を見ることにしました。
6月法改正の7つのポイント
6月5日に女性活躍推進法が改正されました。この法律のポイントは次のようです。
企業などの組織が、まず
(1)自社の女性活躍に関する状況を把握して、
(2)その情報を自社ホームページや厚生労働省のウェブサイトに公表し、
(3)女性の活躍を目指すうえでの課題を見つけ、
(4)そのための企業がどのように行動するか計画を決めて、
(5)これを外部にも公表し、
(6)その計画に従って取組を実施し、
(7)定期的にその効果がうまくいっているか測定する
ということです。
一言で言えば、企業は女性の活躍状況を外部に公表し、その改善を計画に従って進めなければならないという法律です。6月の改正では、上記(2)の公表するデータを増やしたほか、従業員が少ない企業にまで法律の対象範囲を広げました。
ところで、内閣府の男女共同参画局のウェブサイトを見ると、野田聖子・女性活躍担当大臣が「男女共同参画社会の実現は、安倍内閣の掲げる一億総活躍社会の中核」と表現しています。皆さんも普通に考えれば、女性が仕事でも活躍できる環境が整っていないとするならば「平等」という観点から、修正していく必要があるとは思うでしょう。
その一方で、一億総活躍の話題や、少子高齢化による労働力人口の減少が進む中で,その対応として女性の活躍が必要という政策面からの事情が先行するのも、なんとなく本質ではないようにも感じられる方も少なくないでしょう。