はじめに

“女性が活躍している会社”の定義

まず難しいのは、“女性が活躍している”ことの定義です。何をもってそう言えるのでしょうか。

女性の従業員が多いというのが、その1つでしょう。とはいえ、従業員が多い割に管理職になっている女性が少ないケースはどうでしょうか。もしかしたら、正当な評価ができていない会社かもしれません。

では、社長が女性の会社というのはどうでしょうか。イメージとしては、女性が活躍している会社と考えられます。しかしながら、女性の役員が少なかったりすれば、会社全体で見て「活躍している」とは言いがたいでしょう。そう考えると、本当はさまざまな角度から調べる必要がありそうです。

その一方で、企業から開示されているデータは限られています。2014年に、企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部が改正されました。これにより、上場企業などが提出しなければならない有価証券報告書で、役員の男女別人数を開示することが義務となりました。先にお話しした内閣府の資料でも、米国の女性役員比率が分析で取り上げられています。

女性役員数と株価は関係が薄い?

まず本格的な分析をする前に、東証1部で上場している企業の中で、女性役員の人数の状況はどのようになっているのか、確認しておきたいと思います。

女性役員数

集計してみると、女性役員が「いない会社」が東証1部企業の56%と大半を占めています。近年女性の活躍が注目されている割には、役員クラスではかなり遅れている印象です。

そこで、女性役員が「いる会社」と「いない会社」で分けて、株式の平均収益率を観察してみました。分析としては、ある過去の時点で女性役員が「いる」と「いない」で分類して、その後1年間の株式の平均収益率を見ています。

それでは、足元からさかのぼって、2年間を見てみましょう。昨年(2018年5月時点)と一昨年(2017年5月時点)で調べています。ともに5月時点なのは、わが国に多い3月期決算企業の本決算発表が出そろった後だからです。

女性役員の有無

分析からは、なんとも言えない結果になりました。2017年5月末基準のケースでは、女性役員が「いる」と「いない」の平均騰落率はそれぞれ20%程度となりましたが、むしろ「いない」が少しばかり上回っています。また2018年5月末基準のケースでは、女性役員が「いる」「いない」で共に下落しました。

これは、2019年にかけて株式相場全体が調整していたこと(日経平均株価は2万2,201円から2万0,601円に下落)が理由です。確かに「いる」のマイナスが少し小さいですが、いずれにしても微妙な結果です。

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