はじめに
昭和の頃、“アイドルのファンは結婚したら卒業するもの”という認識がありました。しかし、平成に入って以降、その価値観は徐々に変わっていき、現在では30代や40代になっても、アイドルのライブ会場に足を運べる風潮が出来上がりました。好きな人をずっと追い掛けられる時代に突入したのです。
その分、お金のやり繰りという悩みは増えたかもしれません。平成元年生まれで、今年30歳を迎えるオタク女性4人組から構成される『劇団雌猫』の中から、ジャニーズJr.の『美少年』を推しているユッケさん、韓国のアイドルグループ『SEVENTEEN』(以下、セブチ)と『宝塚歌劇団』を愛するかんさんは、どのようにお金と向き合っているのでしょうか。前回に引き続きオタク女子とお金の問題を語ってもらいます。
――結婚してからもオタク活動を継続するために大事なことは何でしょうか。
かん:当たり前のことかもしれませんが、妻も夫も仕事を辞めないことですね。どちらかに依存してはいるとどこかに無理が来るはず。2人が働き続ければ、生活費も折半して出し合えるので、基本的にお金で破綻することはなくなります。
ユッケ:私は未婚ですが、仕事がオタク活動にポジティブに作用することもありますよね。18時からライブがあるから、絶対に定時で終わらせようとめちゃくちゃ頑張る。平日に有給を取りづらくならないように、現場(※コンサート)がない時に真面目に働いて好感度を上げておこうとする。結果的に、仕事のできるコになる。
かん:仕事を辞めたいと思っても、オタク活動が精神的なストッパーになることもあります。もし職を離れたら、再来月のチケット代の引き落としの時に残高が足りなくなりますからね。
ユッケ:仕事を続けていないと、クレジットカードを持てなくなる可能性もありますからね。カードを使えないと、遠征時の飛行機やホテルの予約などに困るようになる。
―——貯金や保険はどうされていますか?
かん:周りを見ると、オタクじゃない人は当たり前のように貯金するし、保険にもちゃんと加入している。オタクは、そのお金を丸々“推し”に当てているから……。
ユッケ:そうだね(笑)。『日経ウーマン』の特集を読むと、30代で1,000万円を貯めている人もいるんですよ。私の友達でも貯金を800万円くらいしている手堅いコもいます。
“推し”の「セブチ」グッズを手に、熱弁するかんさん
かん:偉いよなあ。私は、貯金や保険について何も考えていませんでした。今年出版した、『一生楽しく浪費するためのお金の話』(イースト・プレス)という本でファイナンシャルプランナーの先生のお話を聞いて、ようやく月3,000円の都民共済に入りました。
ユッケ:インフレの可能性もあるから、貯金だけだと不安だしね。銀行の金利なんて、あってないようなものですし……。日本全体で急激なインフレが起こるとは考えづらいですけど、オタク活動に目を向けると値上がりが起こっているんですよ。ジャニーズのコンサートグッズである「ジャンボうちわ」は500円から600円に値上がりしましたからね。公演ごとに買い替えるので、じわじわ効いてきます。
5月30日、渋谷の西武にジャニーズ Jr.オンリーのグッズショップ「Johnnys' ISLAND STORE」ができました。オープン初日、友達が抽選に当たって入場できたので、私の分まで代理購入してくれたんですよ。写真やフォトフレームなどを買ってもらったら、2万円くらいになった。まさか、そこまでなるとは思っていなかった…。立て替えさせてしまって、罪悪感を覚えました。
かん:昔と比べて、グッズの数も増えているし、値段も上がっている証拠だね。それに、コンサートの値段も高くなっています。音楽業界がライブ動員に力を入れているし、これからもっと上がるかもしれない。だから、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などを利用して、投資をしておいたほうが良いかもね。