はじめに
「がんばりすぎない料理本」が売れる理由
料理研究家・土井善晴さんが2016年に刊行した『一汁一菜でよいという提案』がヒットするなど、ここ数年、「がんばりすぎない料理本」がトレンドになっています。
東京ガス都市生活研究所の「生活定点観測調査」によると、夕食を作る時間が1時間未満の人の割合が1993年には4割程度だったものが、2014年には約6割に増加。その背景にあるのは、共働き女性の増加です。夫の家事参加も増加傾向にあり、料理の担い手が多様化しています。
こうした事情が、限られた時間で簡単に作れる料理本の人気に影響を与えている可能性がありそうです。
料理レシピ本大賞の実行委員長でブックス タマの加藤勤社長によると、出版物の市場が縮小する中、レシピ本は健闘しているほうだといいます。「単独のレシピを調べるには、ネットを使ったほうが早いですが、ライフスタイルの提案や外国料理などはパッケージとしてのコンテンツに需要があります。お金を出しても読みたい方がいる」と分析します。
大賞を受賞した『世界一美味しい手抜きごはん』はすでに販売部数が30万部を突破。著者のはらぺこグリズリーさんは「料理を簡単に作ることにポジティブな印象を持つ人が増えてきた気がします」と語ります。料理に対する意識の変化をうまくとらえ、提案できる本が次なるヒットにつながるかもしれません。