はじめに
すでに整っている環境をどう使い地域活性につなげるか
「する」アプローチの武道ツーリズムを目的に訪れる人は、地元道場での稽古などを行うことで、通常の観光客より長い間その地域にとどまり、地域経済に貢献してくれるというメリットがあります。しかし受け入れ環境は、まだ十分とは言えません。
「海外からの需要は感じますが、肝心の受け入れ体制の不足があります。各地域の道場と提携して武道ツーリズムを円滑に進めるには、各県の剣道連盟との連帯は不可欠です。稽古や交流には語学も必要になります。そして文化交流なのかビジネスなのか、その辺りの定義をきちんとせず地元の人の好意に頼っていては、長続きはしません」(多田さん)
武道ツーリズムは、私たち日本人が何気なく感じている自身の文化を見直す機会にもなります。
「私は幼い頃から剣道をやってきました。“礼儀”ということを常に言われ、先生方から言われたことに何の疑いを持たずにやってきました。しかし、異なる文化圏で生まれ育った人は違います。なぜ礼儀を大切にしなければいけないかを、分かるように説明しないといけない。日本人の剣道家も外国人の剣道家も、各々を振り返る良い機会になります」(多田さん)
今回のフランスからのモニターツアーは、地元テレビなどにも取り上げられ、武道ツーリズムということを地域の人が知る機会になりました。さらに今年10月に宮崎県は、シンガポール、台湾、マレーシア、タイの地域から剣道家を迎え入れ、2回目のモニターツアーを行う予定です。
「新しい取り組みが地方に届くまでには時間がかかります。今回のモニターツアーを通して、武道ツーリズムといことを地元の人が少しでも身近に感じられたのではないでしょうか。ここから武道ツーリスムに関心を持ち手を挙げる人が、たくさん生まれればいいなと思います」(多田さん)
取り組みは始まったばかりです。