はじめに

10月1日から、消費増税の負担軽減策として導入される軽減税率。しかし、制度が複雑で、小売りの現場でも十分に理解できていないという声もあります。

前回はスーパーで買う人も多い「食品・飲料」の軽減税率を取り上げましたが、今回は特別な日の商品について考えてみます。軽減税率のキホンを理解し、消費増税を賢く乗り切るコツは、どこにあるのでしょうか。


これからがピーク、「おせち」予約の注意点

10月1日から始まる軽減税率の対象は、酒類を除く食品・飲料。わかりづらいのは、軽減税率の対象である食品・飲料と、それ以外のものがセットで販売されている商品の扱いです。

国税庁によると、これらは「一体資産」と呼ばれ、(1)税抜き価格が1万円以下、(2)食品部分の価格が3分の2以上の場合には、商品全体が食品・飲料として扱われ、軽減税率の対象となります。このようなややこしいルールを設けるのは、宝石などの効果な商品を、食品と抱き合わせて販売し、軽減税率の対象とすることを防ぐ目的だそうです。

まず問題になりそうなのは、早くも9月から予約が始まっている新年の「おせち」。食品なので消費税率は8%と思いきや、一部の高級なおせちは軽減税率の対象外となりそうです。それは、漆や焼き物など、高価な重箱に入っているもの。重箱の価格が全体の価格の3分の1を超えると判断される場合、税率は10%となります。

また、消費税は年末の引き渡し時点で発生するので、10月1日以前に予約をしても、増税を逃れることはできません。楽天市場でトレンドハンターを務める清水淳さんは「ほとんどの通販のおせちは高級な重箱を使っていないので、税率は8%のままでしょう。ただし、百貨店などで購入する一部の高級おせちは要注意です」と指摘します。

ギフトはポイント還元をうまく使うべし

続いて問題になりそうなのは、母の日ギフトやお歳暮です。

母の日のギフトの定番である花とスイーツのセット商品は、スイーツ部分の価値が3分の2以上を占めると、税率は8%のまま据え置かれます。しかし、スイーツ部分の価値が3分の2未満のものは10%となります。つまり、同じ母の日ギフトでも、税率が8%のものと10%のものが混在することになります。

現場では混乱が予想されますが、清水さんは「来年の母の日ギフトは、増税されるカーネーションなど花の需要が減り、スイーツなどの需要が増えるのではないでしょうか。東京オリンピックが間近に迫る時期なので、和菓子などがトレンドになるかも」と予測します。

一方で、政府のキャッシュレス・ポイント還元事業により、6月30日までは中小店舗で5%、大手フランチャイズ店で2%のポイント還元が行われます。つまり、5月中旬に贈る母の日ギフトは、お店をうまく選び、キャッシュレス決済をすれば、5%のポイント還元となります。実質的には今年より安くなるケースもありそうです。

消費者がとるべき対策は?

実は、実店舗を持つ小売店だけでなく、楽天市場やヤフーショッピングなどの大手ECサイトに出店する中小店舗の多くも、ポイント還元対象となります。

清水さんは「増税後の10月以降はポイント還元をうまく使うことが大切。同じものを買うのであれば、5%還元のお店を探したい。楽天市場でも、全加盟店の半分以上である2万店舗以上がポイント還元の対象なので、賢く買い物をしていたければ」と話します。

消費者が負担軽減策を上手に活用するためには、制度の趣旨を理解し、買い物をする店舗を使い分ける必要がありそうです。

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