はじめに

ここ数年でぐんぐん利用者を伸ばしているQR決済サービス。流行している背景には、スマホだけで簡単に支払いができる利便性はもちろん、大盤振る舞いのキャッシュバックが起爆剤になっていることも挙げられるでしょう。

こうしたキャッシュレスサービスは欧米諸国や中国などが草分けのイメージがありますが、実は必ずしもそうではありません。特に筆者の住んでいるイタリアはキャッシュレス後進国で、日常生活の中ではあまり使う機会がないのが現状です。こうした違いはなぜ生まれるのでしょうか。日本とはちょっと異なる、イタリアのキャッシュレス事情をご紹介しましょう。


イタリアはまだまだ現金主義

先にお断りしておくと、イタリアにも決してキャッシュレスサービスが存在しないわけではありません。クレジットカードは日本ほど普及していませんが、銀行のキャッシュカードにはデビット機能が付与されているものも多く、事前にチャージしただけ使えるプリペイドカードもあります。また「〇〇pay」のようなサービスも、選択肢は多くありませんが登場してきています。

ただ、普段の買い物ではデビットカードやプリペイドカードを使う機会はあまりなく、まだまだキャッシュレス後進国であることを感じます。

欧州中央銀行(ECB)が2017年に発表した統計によると、イタリアでは日常における支払いの約86%は現金で行われているのだとか(支払回数ベースでの統計)。

同じヨーロッパでも、オランダ(45%)やフィンランド(54%)、ベルギー(63%)などと比べるとキャッシュレスの普及率には大きな差があります。ちなみにイタリアのように現金払いが主流の国にはドイツ(80%)、オーストリア(86%)、スペイン(87%)などがあり、一般的に北欧のほうがキャッシュレスが普及している傾向にあります。

イタリア支払いにおける現金使用率(ECBのデータをもとに作成)

こうした違いはなぜ生まれるのでしょうか。イタリアを例に、キャッシュレスがそれほど流行らない理由を考えてみましょう。

現金が一番便利に使える

「キャッシュレスよりも現金のほうが便利」と言うと奇妙に聞こえるかもしれません。キャッシュレスは携帯電話やカード一つでさっと支払いができ、小銭で財布が重くなることもない。そう考えると、キャッシュレスのほうが利便性は高そうな気もします。

イタリアはまだまだ個人商店が多く、地域ごとに開かれている露店市場で買い物をする機会も頻繁にあります。当然ながらこうした店ではキャッシュレスに対応しているケースは少なく、支払いはほぼ現金のみ。ローマやミラノなどの都市部でもこの状況は大きく変わりません。

スーパーや公共交通機関、チェーンのレストランなどではカードも使えますが、それ以外の場面ではまだまだ現金でないと支払いできないケースが圧倒的に多いのです。

イタリア

また、キャッシュレスに対応している店でも、機械が壊れていたりネットワークがダウンしたりして一時的に使えないこともよくあります(よくモノが壊れている、というのはイタリアあるあるだったりします)。結局のところ、イタリアではどんな場面でも確実に使える現金が一番便利な支払手段なのです。

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