はじめに

厚生労働省の発表によると、2月の有効求人倍率は1.43倍と高止まりを続け、高い水準をキープ。企業の求人数が増加する半面、有効求職者が減少するという売り手市場が続くなか、とりわけ低賃金・長時間労働のイメージが強い、外食産業の人手不足が深刻です。

この厳しい採用市場において、今までと同じ取り組みでは人材確保は難しいと、マクドナルドが過去最大級のクルー採用キャンペーンを展開。業績の劇的なV字回復で話題を集める同社初の試みに注目しました。


採用目標は 2万5,000人

高校生になって、はじめてのアルバイトはマクドナルドで。フルタイムでたくさん働きたい人はシフトをガッツリ。小学生の子を持つママはお昼の時間だけ。以前アルバイトをしていた人も、再チャレンジを。

地元に必ずひとつは存在する身近なファーストフードチェーン・マクドナルド。同社は、スキマ時間で働けるような融通の効くシフト体系を整え、そのクルー(店員)にさまざまな働き方を提案しています。

安定したオペレーションのためには、人材の確保が不可欠。日本マクドナルド株式会社は、マクドナルドと共に成長してくれる仲間の募集を目的に「クルーになろう。キャンペーン2017」(期間:2月1日~5月31日)を、過去最大規模で展開中。

2万5,000人の採用を目指し、AKB48横山由依さんなどを声優として起用したテレビCMやオリジナルアニメも作成しました。

また、3月15日には同キャンペーンの一環として、全国の店舗で一斉に「クルー体験会」を開催。

参加者たちは貸与されたエプロンとキャップを着用後、厨房でハンバーガーやドリンクの製造や、注文から受け渡しまでの模擬接客を体験。通常は入ることのできない冷凍・冷蔵庫を見学するバックヤードツアーも実施し、実際の店舗での体験を通して仕事内容の理解促進を狙いました。

1万8,000人がクルー体験

今までにない画期的なこの採用施策。反響はどれくらいあったのでしょうか。

日本マクドナルド株式会社コミュニケーション本部PR部の担当者に聞くと、「クルー体験会には、約1万8,000名の方がご参加くださいました。大きな反響をいただき、とてもありがたく思っています」と喜びの声。事前予約を不要としたことで、当日、飛び込みで参加した方もたくさんいたそうです。

体験者からは、「(実際に働くことへの)不安が減った」「店長やほかのクルーの方の人柄がわかって安心した」「先輩クルーが教えてくれるので、自分でもできそうと思った」「とりあえず体験することができてよかった」といったポジティブな意見が多く寄せられました。

また、マクドナルドのクルーといえば、最近は、年配の方が元気よく接客する姿も印象的。今回のキャンペーンに年齢制限はあるのでしょうか。

「当社では採用に年齢制限を設けることはせず、常にすべての属性の方をその対象としています。そのなかでも今回は、卒業・入学シーズンということもあり、とくに学生の方や、主婦の方にご興味を持っていただけるのではと考えておりました」(コミュニケーション本部PR部・担当者)

今回のクルー体験会はあくまでも楽しんでもらうことを主眼としていたため、その場で参加者の方の適性を判断することはしていないそうですが、事前に仕事内容への理解を深めた上で応募してもらえば、雇用後のミスマッチが避けられ、企業にとっても応募者にとっても有意義ですね。

時給水準以外の面で競争力を出すための今回の施策。実際に体験後、すぐに応募し、適性テスト・面接など通常の採用フローを経て、クルーとなった方も多数いるそうです。

2017年、成長段階へ

消費期限切れの鶏肉使用や異物混入などの影響を受けて、2014年に赤字転落した後、不振が続いていたマクドナルドですが、昨年は大幅にV字回復し黒字に転換。季節限定メニューや店舗改装、ポケモンGOとのコラボなどさまざまな戦略が、その復活に寄与しました。

3月24日に開かれた同社の定時株主総会では、サラ・カサノバ社長が「2017年は成長段階に入る」と宣言。

PR担当者も、「2016年ビジネスの回復を遂げ、2017年はさらなる業績拡大を目指しています。(今回の採用キャンペーンでは)店舗の実行力を高めるため、共に店舗を盛り上げてくれる人材をより強く求めています」と言います。

加えて、同社では働き手の流出を抑えるための動きも活況で、総額20億円を投じて店の教育や情報システムを更新。アルバイトの研修時間を縮めたり、販売促進活動をスムーズに進めたりできるよう、今秋から導入実験を始めるそうです。

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