はじめに
愛人生活を経て
28歳のとき、昼間の仕事を辞めて愛人生活へ。
「スナックのお客さんの紹介なんです。何をしている人かよくわからなかったけど、愛人になってもらえないかと言われて。私より10歳年上の優しい人でしたよ。彼が所有しているマンションの一室をあてがわれ、生活費ももらっていました。お尻をアップさせる手術も受けさせてくれました。ただ、どうやら奥さんにバレたようで、1年半ほどで別れることになりましたが」
そのころの彼女には、「恋愛感情」が抜け落ちていたといいます。お金をもっている男性に近づいて、きれいになるための資金を出してもらう。そのお礼に、きれいになった体を提供する。そんな感覚が強かったそう。
「どこか壊れていたと今になると思います。ただ、あのころはきれいになりたい病に取り憑かれていたんです。きれいでなければ、誰も私を必要としてくれないと思っていた」
自分に自信がなかったと彼女は言います。それというのも、彼女は親に愛された記憶がないから。酒を飲んでは暴力をふるう父、そんな父を憎みながらストレスをひとり娘の彼女にぶつけた母。「不細工な子」と母に罵られたことを思い出すと、今も落ち着かない気持ちになると彼女は言います。彼女が大学へ行けたのは、母方の祖父母が親身になってくれて学費を出してくれたからだそうです。
「30歳を目前にして、再び昼間の仕事に就きました。仕事は大変だったけど社内に好きな人もできて、社会に出てから初めて、落ち着いた恋愛をすることができたんです」
整形のことはなかなか同い年の彼に言えませんでした。2年ほどつきあったころ、彼はしきりに友人たちに彼女を紹介するようになりました。その後、彼に聞かれます。
「僕の女友だちが、マユコのこと整形だっていうんだけど本当?」
と。ウソはつけませんでした。言おうとしたけど言えなかった、あなたを失いたくなかったから。そう告げましたが、彼は去っていきました。
「私にとっては“たかが整形”だったけど、彼にとっては“されど整形”だった。結局、きれいになっても誰にも愛されなかったことで落ち込みました」