はじめに
裏切られても…
裏切られていた悲壮感は、ワカコさんにはありません。短期間とはいえ、自分以外の女性とも関係をもっていた彼、しかも妻の従姉妹であるという事実を、どう思っているのでしょう。
「まあ、そういう男なんだからしかたがないですよね。彼は『離婚したんだから、ワカコと一緒になれるはずなのに、経済的に厳しい。もう少し待っててほしい』としょっちゅう言っています。私に捨てられたら、彼の味方は誰もいません」
自分しか頼れるところがない彼。そういう意味では、彼女のプライドは多少満たされているのかもしれません。
「今後どうするかは私の選択にかかっているわけですよね。しょうもない男だとは思うけど、それでも今のところは彼のことが好きなんです。彼のことがイヤになるまでは、このままゆるく見守っていこうかな、と。ただ、ここでさらに私の存在が奥さんにわかってしまったら、もっと大変なことになると思うので、それだけは気をつけないと……」
大変なことになっていると客観的には感じられるのですが、妙に落ち着き払った彼女の態度が印象的でした。