はじめに
「人生100年時代」は、長期化する人生をカバーするための計画的な資産形成(資産寿命の延伸)がこれまで以上に求められます。その最も心強い対策は、年齢にかかわらず、できるだけ長く“働く”ことでしょう。
近年では、60代以降の就労が健康維持につながる可能性があることや、仕事や趣味を含む多様な社会的活動に主体的にかかわることが、高齢期の心身の健康維持によい影響をもたらすことも明らかになっています。そこで今回は60歳以上の男女における社会的活動の実態や、望ましい高齢期の生活についての意識に関する調査結果をご紹介します。
60歳以上の男女における社会的活動の実態
内閣府では60歳以上の男女を対象として「社会的活動」の実態をたずねています。この調査では「社会的活動」を「グループや団体、複数の人で行っている社会や家族を支える活動のこと。活動の内容が社会や家族を支える活動であっても、単なる近所づきあいによるものは含まず、現在はたまたま一人で活動しているが、本来は組織がある(組織をつくる予定がある)場合は含む」と定義しています(図1)
資料:内閣府『高齢者の経済・生活環境に関する調査』、2017年3月。調査対象者は全国の60歳以上の男女3,000名。調査時期は2016年6月
調査結果をみると、「特に活動はしていない」と答えた人は69.9%で、2016年時点での実施者は3割程度と考えられます*1。最も多かった活動内容は「自治会、町内会などの自治組織の活動」(18.9%)で、「趣味やスポーツを通じたボランティア・社会奉仕などの活動」(11.0%)がこれに続きました。
実施者の割合は、無職の人に比べ有職の人、また月あたりの収入が低い人に比べ高い人で高い傾向にあります(図表省略)。また、活動場所については9割以上が「居住地域」と答えましたが、大学・大学院卒や月あたりの収入が高い人では「居住地以外の日本国内」をあげる人も2割弱と、地域の範囲を超えて活動する人の割合も高くなっています(図表省略)*2。
9割以上の人が効用あり
これらの人は、活動にどのような効用を感じているのでしょうか。「生活に与えている効用はない」と答えた人は8.1%であったことから、実施者の9割以上は何らかの効用を感じていると考えられます(図2)。
資料:図1に同じ。回答者は図1で何らかの活動を行っていると答えた人
最も多かった回答は「新しい友人を得ることができた」(56.8%)であり、「地域に安心して生活するためのつながりができた」(50.6%)、「社会に貢献していることで充実感が得られている」(38.2%)、などがこれに続いています。前述のとおり、活動の実施者は3割程度であったことから、これらの効用を感じている人は全体の3割に満たないものの、心身の健康や生活習慣への好影響を感じている人もいることがうかがえます。