はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。
資産管理をしていくうえで、国の年金制度についてどのように解釈したらよいのでしょうか? 民間の保険や年金商品であれば解約である程度の返金が見込めるため、金融資産と考えられると思います。ただ、国の年金制度は「支払った額=受給額」ではなく、給与のようなものに思えます。国の年金は資産と考えてよいのでしょうか? それとも、給与のようなものと捉えたらよいのでしょうか?
(30代前半 独身 男性)
深野: 資産管理をされていくうえでのご相談ですが、国民年金や厚生年金などの公的な年金に関しては、一般的に個々人の資産に含めることはありません。
ご質問にも書かれているように、受給権が得られる25年間加入したのち、途中で辞めたとしても解約返戻金があるわけではないということもひとつの理由になるでしょう(2017年8月、年金法改正にて最低加入期間が10年に変更されます)。
基本的には資産に含めない
どちらかといえば、年金は資産というより給与に近いと考えたほうがよいと思われます。
ただし、老後資金の準備をする際には、リタイア後のセカンドライフで予想される総支出から、受け取れるであろう公的年金額を差し引いて、準備する金額を計算するのが一般的です。そのため、正式とは言えないまでも、どこかで資産として含めている部分があることから、ややこしいのかもしれませんね。
資産に含めるという観点でみると、自分の裁量で自由に管理できる金融資産、不動産、動産になるでしょう。
裁量ができないものは、資産に含めないという線が引けるかと思われます。あるいは裁量がないものでも、裁量ができるようになったら資産に含めるという考え方もあります。
資産に含めるタイミング
例えば、定年退職時に受け取る退職金。若い頃は、「退職金はもらえるんだろうな」と思っていても資産に含めることはなく、退職間際になったら資産におぼろげながら含め、退職金を受け取ったらはっきりと資産に含めるはずです。
なお、国民年金や厚生年金などの公的年金のほかに、国民年金基金や付加年金、小規模企業共済など、自営業者などが国民年金に上乗せする制度、企業年金なども資産に含めることは通常ありません。
しかし、老後のキャッシュフローを考えるときには、これらをすべて含めるうえ、先に述べた老後の準備資金を考えるときには当然ながらこれらの受け取り額も差し引くことになります。