はじめに
社内で不評だった580円の靴下も受けた
バイク愛好家に支持されるアウターも、北海道在住のバイク好きの男性の要望で、風が入らないように、ジャケットの前立てを高くしたり、ジャケットの脇を絞るなど、改良を重ねてきました。ワークマンの土屋哲雄専務は「本当にバイクが好きな人だからこそ、足りない機能に気付いてくれる」と強調します。
また、ウールの中でも最高級のメリノウールを使った靴下は、発売当初、一足580円の価格設定が社員の間で不評でした。広報担当者は「199円や280円といった靴下ばかり見ているので、『靴下がこんなに高くて、売れるのか』と反応が良くなかった」と明かします。しかし、登山が趣味のブロガーがコスパの良さを発信し、看板商品になったといいます。
メリノウールの靴下はコスパの良さが評価された
作業着を販売するワークマンは、職人の要望を店長が聞き取り、商品の改良につなげてきました。ワークマンプラスが開業してからは、一般客の声を商品開発に生かすために、アンバサダーを起用しています。ワークマンがアンバサダーに報酬を払うことはありません。しかし、アンバサダーにとってはいち早く新商品情報を知ることができ、自分のサイトのページビュー数が伸びるというメリットがあります。
目下の課題は、店舗ではスマートフォンでQRコードを読み取るひと手間がかかるということ。同社はポップを置く位置などを工夫し、11月中には対象店舗を増やす計画です。
来春には「二毛作店」の出店も
土屋専務は「ワークマンの商品が本当に好きという人だけに協力してもらっているので、著名人に依頼することはない。2020年12月までにアンバサダーの数を50人に増やしたい」と意気込みます。2020年9月には、アンバサダーと開発した商品だけを集めたファッションショーも開く予定です。
キャンプ好きの女性が改良した綿100%のパーカー
ワークマンプラスは2018年9月、東京・立川の「ららぽーと立川立飛店」に1号店をオープン。以来、大都市圏のショッピングセンターをはじめ、全国で路面店を出しています。2020年3月末までに167店まで増やす計画です。ワークマンプラス効果で、同社の2019年3月期のチェーン全店売上高は前期比16.7%増の930億円。2020年3月期には初の1,000億円超えを計画しています。
「アウトドア市場で機能性が高く、低価格の商品を手掛けているのはウチぐらいしかいない」と土屋専務は自信をのぞかせます。来春には朝夕、昼間と時間帯によって、看板や内装、香りまで変えることで、集客力をアップする「二毛作店」の出店を予定しているといいます。
多様な“変化球”で、既存の客層とは異なる新規顧客の開拓を進めているワークマン。年初には3,470円だった同社の株価も、10月には9,650円まで上昇しています。矢継ぎ早の取り組みによって、株価と業績をさらに高めることはできるでしょうか。