はじめに

実用的・低価格にカジュアルさを付加

こうした取り組みの下で、ワークマンが取り扱う全ジャンルのうち、存在感を高めているのがカジュアルウエアです。2017年度は10.9%だった同ジャンルの売上高構成比が、2018年度には11.3%まで上昇。2019年度第1四半期(4~6月期)は14.9%と、一段と伸びています。

同四半期のカジュアルウエアの売上高は42.9億円。前年同期に比べて45.6%増と、実際の売上高も大きく拡大している格好です。その背景には、ワークマンがこれまでの主要ターゲットであった1次産業従事者や、職人の人口減少があると考えられます。

これまでは、プロの現場での使用に耐えられる耐久性や機能性を、購入しやすい値段で提供してきたことで成長してきましたが、開催が来年に迫ってきた東京オリンピックなどの影響もあり、足元ではスポーツやアウトドアレジャーへの関心が高まっている状況です。

このタイミングで、ワークマンは「アーバンアウトドアスタイル」を求める消費者をターゲットにした機能性ウエアを提供し始めているのです。登山などに代表されるアウトドアレジャーでは、丈夫で機能性が高い商品が求められます。ワークマンは、作業着分野での確かな実績と商品力を持って、アーバンアウトドア分野の市場に参入しているのです。

ワークマンが次に大きな注目を浴びる可能性のあるタイミングは、来年の東京オリンピックでしょう。

東京都などが掲げた暑さ対策は、「かぶる傘」や「うちわ配布」といった、根本的な解決策とは言いがたいものでした。抜本的な解決策が見つからなければ、観客は各自で自衛策を取ることを余儀なくされることでしょう。ここで有効な策の1つとして空調服が取り上げられれば、ワークマンの売り上げを押し上げるかもしれません。

株価の指標面からは手を出しにくい?

しかし、株価の指標面を見ると、状況は少し異なります。ワークマンの信用取引残の推移を見ると、現時点で個人投資家を中心とした買いが相当に入っていることも事実です。足元の信用買い残高は129万1,400株で、前週比で6%以上も残高が積み上がっている状況です。

さらに、10月16日には特段の材料がなかったにもかかわらず、株価が9,650円から8,000円へ高値から一時17%以上も急落するなど、ボラティリティ(価格変動の大きさ)が高まっています。高値圏でのボラティリティの高まりは、市場参加者の間でも方向感に迷いが出てきたことを示唆するもので、株価急落の原因になることもしばしばです。

足元のPER(株価収益率)は58.96倍で、一般的には“割高”と認識されてもおかしくない水準。仮に購入を検討されている場合は、そのタイミングについて慎重に判断すべきかもしれません。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>

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