はじめに

嘘の連鎖を断ち切る

では、彼らは被害者なのでしょうか? いいえ、残念ながら、彼らは加害者の側面が大きいと思います。これだけの有名人が、忘年会に参加することで、詐欺師は「自分たちは、有名人をも動かせる」と、翌日から高齢者を騙すためのモチベーションを上げるきっかけになったはずだからです。知らぬ間に、加害者の側に回ってしまう。これが一番怖いのです。私たちも、自分が良かれと思って、口コミで何かを紹介して、被害を拡大させる手足とならないように気をつけましょう。

その後、宮迫氏と亮氏の涙ながらの謝罪会見が行われました。二人からは「嘘をつかずに話す」という姿勢が、ひしひしと伝わってくる内容で、ようやく被害者の痛みにまで思いが至ったのだと思いました。その「嘘をつかない」という姿勢での会見は、嘘という負の連鎖を止めました。

最初に、詐欺集団の忘年会に参加したという事態を収めるために「ギャラをもらっていない」という、小さな嘘をつきましたが、これが大きな火種となりました。嘘というものは転がれば転がるほど大きくなり、収拾がつかなくなるものだからです。一端、はまった負のスパイラルから逃れるためには、すべてを正直に公にすることから始めなければなりません。私たちも詐欺被害に遭って、騙されたとすれば、それを恥ずかしいからと、泣き寝入りしてはいけません。公的な機関に相談、報告して、嘘の連鎖を断ち切ることを考えましょう。というのも、詐欺師は一度、騙された人を二度、三度と狙ってくるからです。

自分の行動が社会を変える

今、「消費者市民社会」の構築が叫ばれています。これは、私たち消費者が、どのような行動をとるかで、社会が大きく変わってくるという考え方です。たとえば、私たちが被害に遭った時、二つの選択肢があると思います。

ひとつは「仕方ない」「恥ずかしい」と押し黙ってしまう行動。しかし、この行為は悪い連中をはびこらせる状況を生み、被害を拡大させてしまいます。これは、まさに問題を指摘されたときに芸人らが「ギャラをもらっていない」と真実を語らず、幕引きを図ろうとした行動といえるでしょう。

二つ目は、勇気をもって、公的機関や誰かに相談する道です。まさに彼らの記者会見です。消費者市民社会では、二つ目の被害者が声をあげることを求めています。被害を報告することで、トラブルは公的機関によって集約されて、多くの人に注意喚起がなされます。結果、被害防止策が打たれて、騙されないための社会がつくられることになります。私たち一人ひとりの行動しだいで、社会は大きく変わるという意識を持つことが、とても大切なのです。

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