はじめに

「1日100杯」が分水嶺

さて、一口に「ラーメン」といってもお店によって千差万別のバリエーションがあります。味付けや具材によって、儲かりやすい(原価が低い)メニューとそうでないメニューがあったりするのでしょうか? 

もしあるのであれば、できるだけ原価率が高いメニューを選ぶのが食べる側としてはコストパフォーマンスがいいということになりますが、藏本さんによれば「いえ、特にこれを出したから赤字になるとか、これを出すと儲かるというのはないと思います」とのこと。

「原価率から考えればシンプルな中華そばがいちばん安くなりますが、シンプルなぶん、いいダシを使わないといい味が出ないですからね」。

なるほど、確かにあっさりとした醤油味の「中華そば」こそ、スープと麺の味がいちばん伝わるメニュー。基本の部分に手が抜けないからこそ、それが原価にも影響するというわけです。

ちなみに、ラーメン店1軒を考えた場合、損益分岐点は藏本さんによれば「だいたい1日100杯ぐらい」とのこと。数字からはイメージがしづらいですが、10席程度の小規模なお店を考えると、ひっきりなしにお客さんが入ってくるような状態だそう。

「なかなか忙しい店ですよね。100杯売っているお店ってそんなにないと思います。常に行列が絶えないような繁盛店は別ですけど」

「売り切れ」も戦略?

工場で作った濃縮スープを仕入れる「工場方式」では、当然ながら店でスープを作る必要がありません。しかも薄めて温めるだけなので、1時間もあれば十分な量のスープをストックできるそうです。

ということは、ラーメン店でよくある「スープ終了のため閉店」ということもない……のかと思いきや、藏本さんは自身がプロデュースする店には、予定の杯数が売れた時点で「『スープ切れました』という張り紙を出すように」言っているとか。

「じつは“売り切れ御免”も大事なんですよ。僕はプロデュースする店には予定の杯数売れたら『スープ切れました』という張り紙を出すように言うんです」

つまり、作ろうと思えば作れるにもかかわらず、それをあえて「やらない」ことでお客さんの飢餓感を煽る。もしかしたらあなたがいつも行っては売り切れで悔しい思いをしているあのお店も、そんな戦略をもって「終了」の張り紙をしているのかも……。

狭い店のほうが儲かる!?

とはいえ、ごく普通の発想では、お客さんが来店するにもかかわらず売り止めるというのは機会損失ではないかとも思うのですが、そこには人間の複雑な心理に対する読みがありました。

「確かに機会損失かもしれないですけど、人間って『食べられなかった』というのが次につながるんですよね。だからあえてそういうやりかたをする。もちろん手作りしている店だと、寸胴1つで70杯くらいしか取れないから、それで終わりということになるのですが」

同じように、席数を増やしていつ来ても座れるようにするよりも、あえて席数を少なくして常に満員という印象を与えることで、その店が繁盛店だと思わせるというのも戦略として重要だと藏本さん。

行列ができていると並びたくなるのは「バンドワゴン効果」として行動心理学でも裏付けられている心理現象。ラーメン店は回転が早く原価率を低く抑えられるぶん、少ない席数でも薄利多売で利益を出すことが可能なのだそうです。

というわけで、ラーメンプロデューサーに伺ったラーメン店の裏事情、いかがでしたか。たかがラーメン、されどラーメン。今度近くのラーメン屋さんに行った際にはビジネス視点でお店の様子を見てみると、新鮮な発見があるかもしれません。

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