はじめに
この春には抜き打ち検査を政府が実施
フランス政府は法案成立の代わりに、この春、大企業を対象に抜き打ち検査をしたそうです。同じ学歴と職歴で、フランス系と移民系の名前を記した仮想人物の履歴書を大企業に送り、面接に呼ばれる比率を比較する検査です。
その検査結果は9月に発表されるそうですが、発表前の段階でもどんな結果になるかは明白です。両者には大きな違いが出るでしょう。ですから法案推進者にとってはこれが強い統計的な根拠になると思われます。
さて、フランス政府はなぜこのような差別撤廃に力をいれているのでしょうか?
履歴書から氏名を消すことが実はテロとの戦いにつながっている
理由はテロの温床を根絶する目的です。昨年11月のパリ同時テロから半年。その後、ベルギーでテロが起き、今後もどうなるのかは全く予断を許しません。
社会に対する若者の不満が、犯罪の温床となり、テロの温床となる。犯罪もテロも許されないことだとしても、その結果を問う以前に、原因を根絶していく必要がある。テロとの戦いは、戦うことだけが解決ではなく、差別と貧困をなくす努力こそが解決につながるという考え方です。
近い将来のフランスでは履歴書から氏名が消えるだけではなく、ひょっとすると面接もオンライン上で互いの顔を見せず、声も聞こえない形で行われるようになるかもしれません。就職が決まって初めて、お互いが姿を見ることができる。技術的にはそこまでの改革が進められる時代ですから、そんな予測もあながち絵空事とは言えないかもしれませんね。