はじめに
「第46回東京モーターショー2019」でも「新型コンパクトSUV」という仮称で展示されていた、ダイハツのコンパクトSUVである「ロッキー」が11月5日に発表・発売されました。同時に兄弟車としてトヨタからも「ライズ」をリリース。実は知れば知るほどこのクルマが今の日本の道路事情にベストマッチする1台であることがわかってきました。その秘密を解説しましょう。
日本の道路は狭く、複雑
昨今のクルマ事情を俯瞰してみるとボディサイズの拡大が目につきます。日本という国土は高速道路から一般道、さらに細街路という非常に狭い道が入り組んだ複雑な構造になっています。法律上クルマが入れる道でもクランク(直角の狭いカーブが二つ交互に繋がっている道路のこと)によって切り返しをしなければならない場所も多く、入出庫で苦労している人も多く見かけます。
すべての人が該当するわけではありませんが、こういう時に便利なのがやはり軽自動車です。軽自動車は全長3,400mm以下×全幅1,480mm以下×全高2,000mm以下と法律で寸法が決められています。特に全幅1,480mm以下というのは前述した狭い道やスーパーの駐車場などで専用スペースが設置されるなど普段の生活の足としては本当に便利です。日本独自の規格ですからまさに日本の道路事情にも合っていますし、売れる理由のひとつとなっています。
一方でデメリットとしては乗車定員は4名まで、また全長も短いので荷室スペースが狭く、また昨今人気の「トールワゴン」タイプですとマンションや都市部に多い立体駐車場への入庫を断られるケースも実際存在します。
利便性の高い軽自動車ですが、安全装備の充実や品質の向上もあり、車両価格自体も上昇傾向にあります。車種によっては最上級グレードで200万円を超えるモデルも存在します。
絶対的に扱いやすいボディサイズ
こちらはライズ。ロッキーとライズは、フロントグリル周辺の造形が異なります
それでは取り回しがしやすく、5名乗車が可能、荷室が広く、価格もリーズナブル、そんなワガママな要求を満たすクルマは日本に存在するのでしょうか。実はボディサイズ(特に全幅)が拡大傾向にある中、上記の条件を満たすクルマは昔より減っていました。そこに登場したのが今回紹介するロッキーとライズです。
まず何より魅力的なのがそのボディサイズです。全長3,995mm×全幅1,695mm×全高1,620mm、この数値が何を意味するのかというと、それぞれにメリットがあります。
全長3,995mm×全幅1,695mm×全高1,620mmですが、寸法以上に立派に見えます
まず全長3,995mmは基本的に取り回しがしやすい寸法ですが、フェリーなどに乗船した際の料金が大幅に安くなります。一例ですが大阪南港から北九州新門司港まで運行する「名門大洋フェリー」の場合、クルマを運ぶ「乗用車航送運賃」は通常期で5m未満の場合、片道で2万3,050円なのに対し、4m未満の場合、1万8,650円と4,400円も安くなります。
次に全幅1,695mmですが、これは5ナンバーの上限寸法、軽自動車よりも寸法は拡大されますが、前述したようにボディサイズが拡大傾向になる中、このサイズは貴重です。道路でのすれ違い時や駐車時もさることながら何よりも後席に3名乗車、つまり乗車定員が5名になる点が一番のメリットです。
そしてクルマの小回り性能を見る時に役立つのが「最小回転半径」です。ロッキー&ライズは4.9mとかなり小さく設定されています。これは16インチホイールを履いたグレードの数値で最上位グレードは17インチホイールを履くことでは5.0mに数値が拡大されます。一方、トヨタアクアの場合などは標準モデルが4.8mなのに対し、ホイールサイズが上がったグレードの場合、5.4mと上位のセグメントのモデルと同等の小回り性能になってしまいます。輸入車の場合はこのような差が少ない車種が多く、元々の設計思想が優れているのですが、その点でもロッキー&ライズも「DNGA」と呼ばれる新しいクルマ作りの考えにより同様の使い勝手の良さを実現しています。