はじめに

ネット動画のようにシーンを短く設計

――今回、作品全体でこだわったことは何でしょうか。

まんきゅう:とにかく「原作ファンに喜んでもらうこと」を意識しました。こだわった所が多すぎて、一晩語っても語り尽くせないと思います(笑)ひとつ例を挙げるなら、背景美術はかなりこだわりました。今回の映画は、キャラクターに音声がつかないので、とにかく退屈しないように、絵本の世界ごとにデザインをガラリと変えています。

原作のデザインから逸脱しすぎないように、なおかつ「すみっコたちと一緒に絵本の世界を冒険しているようなワクワク感」を演出できるような絶妙な世界観を美術監督の日野さんが見事に作り上げてくれました。

すみっコぐらし(C)2019 日本すみっコぐらし協会映画部

――最後に、「映画すみっコぐらし」は多くの観客を引きつける作品になりましたが、監督の思惑通りの反応だったと思っていいでしょうか?

まんきゅう:「もちろん思惑通りです!」と言いたいところですが……(笑)、サンエックスさんをはじめ、今回の映画に関わったスタッフ全員の「すみっコぐらし」に対する愛情が、従来のファンだけでなく、多くの人に届く作品にできたのだと思っています。

個人的に映画作品は時流に乗ることも大事だと考えています。今はテレビだけでなく、ネットで手軽に動画も観られる時代です。自動で自分の好きな関連動画が次々に再生されていきます。そんな感覚で観てもらえるように、ひとつひとつのシーンを短く設計し、シーン毎に「何を伝えたいのか」を明確にすることを意識しました。そうした時代感を組み込んだことも、今回のヒットにつながったひとつ要素なのかなと思います。

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同作には「動くと、もっとかわいい」と思わせるすみっコたちの姿がありました。ファンの思いを裏切らないという高いハードルがあった「すみっコぐらし」の映画製作の背景には、原作者が設定した背景やストーリーに追従する製作チームの真摯な姿勢があり、結果、ファンの期待を上回る完成度の映像作品が生まれ、今回の反響につながったとも言えそうです。

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