はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する野瀬大樹氏がお答えします。
勤め先の外資企業がもうすぐ株式公開しそうで、ストックオプションの権利を持っています。日本で行使した場合には給与扱いとなるそうなのですが、その場合、多額の所得税を取られることになると思います。考えられる節税方法について教えていただけますでしょうか。
(30代前半 独身 男性)
ストックオプションの税制について
野瀬: ストックオプションには、定められた要件を満たす「税制適格」と、満たさない「税制不適格」というものが存在し、下記のように税制上の取り扱いが異なります。
税制適格:「売却時」に「(売却価格-行使価格)×税率」の課税
税制不適格:「行使時」に「(時価-行使価格)×税率」、「売却時」に「(売却価格-行使時の時価)×税率」の課税
これだけ考えると行使と売却のタイミングが問題のように見えるのですが、問題は税制不適格の「行使時」の課税が「給与」扱いになるという点です。
通常、株の売却にかかる税金は所得税と住民税を合わせても20%ですが、給与扱いになった場合、累進課税になるので、税率は単純に合算すると、所得金額が増えるに従い15~50%にもなります。
ストックオプションの場合、高額になりやすいため、通常のお給料と合算するとおそらく前述の20%を超えるケースのほうが多いでしょう。結果として税金が多くなることになります。
そのため、本当は「税制適格」の条件を満たしたほうが節税になるのですが、そもそもこれは会社が決めることですし、すでに質問者の方も「給与扱いになる」と話を聞いているようですので、こちらの節税方法は使えないかと思います。
そのほかに考えられる節税法は?
結論から言いますと、「コレ!」という節税方法はありません。
以前は、「会社にストックオプションを買い取らせる」ことで給与ではなく譲渡所得扱いにするというウルトラCな節税方法もあったのですが、平成26年4月より、この方法をとっても給与扱いにすることが明記されましたので、この方法はとれなくなりました。
最後の手段として、一時的に「租税条約を結んでいない国」の居住者になるという方法もあります。海外の特定の国の居住者になって、その国にいながら権利行使し、売却するのです。この場合、日本サイドからは「行使時」への課税は全額ではなく一部になりますし、「売却時」には基本課税されません。
したがって、当該国の税制次第では大きな節税になる可能性がありますが、質問者の方はお勤め先もあるようですし、現実的には難しいかなと思います。