はじめに

一括か、それとも年金で受け取るべきか?

さて、相談者様の最大の関心事である退職確定給付金の受け取りについてです。

年金で受け取った場合、月額8万3000円を源泉徴収7%で計算すると、税額5810円。手取りは月額7万7190円となります。年間では92万6280円ですので、保証期間20年で受け取り総額は1852万5600円になる計算です。一括で受け取る(1500万円前後)なら税金はかからないということですが、単純に金額だけを比べていくと年金で受け取った方がお得になります。

年金で受け取った場合と一括分で比べたときの差額は、350万円程度です。健康保険料等は収入が増えれば増額しますが、いくら増えたとしても、差額分の350万円を超えることは到底考えられません。

相談者様の年金は終身保証ですので、長生きをすればするほど受け取れるお金は増えていきますから、年金で受け取った方がメリットはより大きくなると思われます。

※参考:健康保険料の計算式
<基礎賦課額+後期高齢者支援金等割賦金+介護納付金割賦金=支払い保険料>
●基礎賦課額
(均等割額:1人年間3万9900円×加入者数)+(所得割額:加入者全員の基礎所得金額×7.25%)
●後期高齢者支援金等割賦金
(均等割額:1人年間1万2300円×加入者数)+(所得割額:加入者全員の基礎所得金額×2.24%)
●介護納付金割賦金
(均等割額:1人年間1万5600円×40~64歳の加入者数)+(所得割額:40~64歳の加入者全員の基礎所得金額×1.66%)

どちらを選ぶかはライフプランを踏まえて決める

年金で受け取った方が金銭的にはお得になりますが、考えて欲しいこともあります。

相談者様に限らず、どうしても税金等の支出に目が行ってしまいます。しかし、それ以上に受け取ったお金をどのように使っていくのかを考えていく必要があるということです。

現状、預貯金は4000万円。既にマイホームを購入され、ご自宅は持ち家ですので、ご夫婦二人で暮らすのに特に不便はないと思いますし、しっかり者の相談者様のことですので、退職後にどのように生活するのかを話し合っていらっしゃることかと思います。

この先に大きな支出はないと思えますが、たとえば夫婦でクルーズ旅行に出かけたい、退職記念で長期の旅行に出かける、別荘を購入する等の予定がある場合は、年金で受け取るべきか、一括で受け取るべきか、一度シミュレーションしてみてください。

まとまって受け取ったお金の方が取り崩しにくい?

お金というのは、同じ金額であっても、分割で受け取るよりもまとまった金額で受け取った方が取り崩しにくいと言われており、実際に、そう感じている人は少なくありません。

相談者様の場合、貯めるというよりも“これからの生活のためのお金”です。取り崩しても問題はないのですが、収入が限られる退職後だからこそ、まとまったお金があることで安心を覚える人も多いのです。

一括で受け取るのか、年金で受け取るのかを選ぶまで時間はあります。退職後にどのような生活を送りたいのか? どのようなイベントを体験したいのか? をご夫婦で話し合い、受け取り方法を決めてみてください。特に大きなイベントがないのなら、よりお得な年金での受け取りをおすすめします。

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