はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。

年収650万円程度、36歳の会社員です。妻の実家にて、妻の両親と2世帯同居をしています。今年、次男が生まれたばかりで、小学1年の長男と合わせて2人の子供がいます。移住した際には、同じ敷地内に別棟を建ててと考えていましたが、当時は職がなく、「同居すれば?」という義理の両親の厚意もあって同居を選択しました。今年で3年目になります。

個人的には自家用車を購入したばかりで自動車ローンもあと4年残っていることから、3年後ぐらいから購入の計画を立てられればと考えていたところ、同居によるストレスからか仲違いが多くなってきており、予定より前倒しで考えています(情けない理由でスミマセン……)。個人年金も始めたいタイミングで、それならば「お金のプロに聞いてみよう!」とご相談差し上げた次第です。

住宅を建てるための土地はあり、義理の両親は快く譲ってくれるとのことですが、登記や住宅用土地への変更などもまだ手付かずの段階で、いったいなにから考えればよいのかイマイチわかりません。土地がある場合で、私の年収や家族構成から考えられる住宅購入についてのアドバイスいただけると幸いです。

年収:650万円
現金預金:260万円
ローン:自動車 150万円
その他負債:0円
(30代後半 既婚・子供2人 男性)


深野: 土地をお持ちの場合の住宅購入、ご質問者の方のケースでは家を建てることについてのご質問だと思いますが、質問を読んでいて気になったのは「住宅を建てる土地はあり、義理の両親が快く譲ってくれる」というくだりです。

土地を譲ってくれるというのは、無償あるいは有償が考えられますが、無償の場合だと贈与税が発生することになります。そして、有償であったとしても、実勢価格よりも低い価格で譲ってもらった場合、実勢価格と購入価格の差が贈与とみなされる可能性があります。

また、譲ってもらう土地は、義理の両親と同じ敷地なのでしょうか? 同じ敷地を譲ってもらうケースでは、一筆の土地を分割してしまうと土地の評価が下がる可能性があることにも注意が必要です。

住宅購入より先に考えたいこと

これら贈与税、土地の評価等を考慮すれば、通常は義理の両親の土地を借りて建物を建てることが一般的になります。

質問者の方のケースでは、土地の譲渡が明確ではないことから、一般的な土地を借りて建物を建てる場合を想定し、回答を進めたいと思います。

いただいた収入や資産、家族の状況を考えると、年齢、収入の割に資産が少ないように感じられます。自動車を現金で購入したばかりで資産が少ないというのであれば話は別ですが、ローンを活用して自動車を購入していることを考えると、無理な住宅ローンを組むことは厳に慎むべきです。

また、2人の子供の教育費が発生することも考慮すれば、いただいた資産のほかに学資保険等に加入していれば救われますが、学資保険などで子供の教育費が準備できていないのであれば、住宅の購入は先に伸ばした方がよいと思われます。

住宅購入のために、家計の体力をつけるべく、「自動車ローンは早めに完済させる」「貯金残高を増やす努力」「子供の教育費の準備」この3点を行ってほしいと思います。

子供の教育費が足りなければ奨学金を利用させる等を考えるかもしれませんが、子供が社会に出たときに数百万円の負債を抱えているのは大変な苦労になります。教育ローンとて、住宅ローンよりも金利が高く、返済期間が短いため、住宅ローンに教育ローンがプラスされると家計の収支がかなり厳しくなる可能性があります。

直近のライフイベントを優先

質問では、「個人年金を始めたいタイミング」と記載されていますが、個人年金を始めるよりも先にやらなければならないライフイベントがあるということを忘れないでください。資金準備は、近い将来のライフイベントから優先的に行うのです。

もし質問に書かれていることから推測した内容がまったく事実と異なるのであれば、筆者の勝手な妄想ですので、ご気分を害されたかもしれないことをお詫びします。

ただ、残念ながら、記載された資産額から住宅ローンを活用しての住宅購入は家計の実勢にあったプランとはなりません。

通常は、住宅購入の頭金を最低でも2割以上準備、住宅ローンを組んでも住宅ローンを組む前と同程度の貯蓄を継続できることが理想になります。

同居でストレスがたまっているようですが、残念ながら家計に無理がある住宅の購入を勧めることはできません。資産に余裕がない限りは、当初に予定していた3~4年後の購入としたほうがよいと思います。

まずは、土地の扱いをどうするのか義理の両親とよく話をすることからスタート。同時にライフイベントを見据えた貯蓄力の強化に努めるべきでしょう。

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