はじめに

一度見直すと効果が続く「固定費」

残りの支出である水道光熱費、保険料、通信費は固定費にあたる部分です。こちらは日々のお金の使い方で減らすというより、契約を見直すことで減らすことができます。そして一度見直すと、その後は効果が続きます。

水道光熱費の1万5000円はひとり暮しにしては高いです。全国的な家計調査では、子どもがいる世帯でも2万円台の前半、シングルなら1万円ちょっとです(総務省「家計調査」平成29年、世帯主が45~49歳の2人以上世帯で2万2000円、世帯主が35~59歳の単身世帯で1万637円)。

電気代は、数年前に電力の自由化が行なわれ選択肢が増えています。電気とガスのセットなら安くなるプランもあります。インターネット上で世帯人数や暮らし方などを入力すると料金のシミュレーションができる会社が多いので、契約の変更で5000円ほど減らせないか調べてみましょう。

次に保険料の1万3000円も、シングルには多いように感じます。どんな保険でどんな保障を確保しているのでしょうか? シングルが加入しておきたい保険としては、病気やケガで働けなくなったときに給付金を受け取れる就業不能保険や、ガンが心配な人ならガン保険でしょうか。両方に加入したとしてもシンプルな掛け捨て保険なら、1万円未満で収まるはずです。保険の見直しで最低3000円は節約できます。

通信費の1万3000円も1人にしては高いでしょう。インターネットやスマートフォンの契約内容にもよりますが、高くても8000円程度で収まるはず。こちらも現在、各社でシミュレーションができるので5000円程度減らすことを目標にしてプランの見直しを。

表1

働き続けることは、家計的にも精神的にもプラスに

住居費と食費はそのままでも、残りの費目について節約ができれば、合計で月1万8000円減らせるので、1万4118円の貯蓄上乗せは充分可能です。

このペースで2年間を過ごし、50歳になったら取り組んでいただきたいことがあります。「ねんきん定期便」の確認です。日本年金機構から毎年届く「ねんきん定期便」は、50歳未満と50歳以上では様式が異なり、50歳以上になると今のペースで60歳まで働いた場合に65歳からもらえる公的年金の見込み額が記載されるようになります。公的年金をいくらもらえそうか、確認してください。

ご相談者は、身体が動く限り70歳を過ぎても月10万円くらいはパートで働いて稼ぎたいと意欲的です。節約により毎月の生活費は17万円に減りました。支出のペースが今後も変わらないとすると、公的年金を7万円以上もらえれば、パート収入と公的年金で生活費をまかなうことができ、65歳以降も働いている間は、貯めたお金に手を付けずに済みます。

公的年金は国民年金の満額で月6万5000円程度。ご相談者は会社員で厚生年金加入のはずですから、月10万円前後はもらえると思われます。仮に公的年金額が月10万円台の前半で、税金や社会保険料を引いた手取りが10万円ならパート収入と合わせると月20万円。3万円の余裕がありますから、貯蓄に回したり、予備費にしたり、生活費以外の楽しみに使えます。

働くことは精神的な張り合いや、人間関係の維持にもつながりますから、ぜひ仕事を続けてください。

公的年金の受給額によっては、老後の軌道修正を

さて、仕事をやめ、年金収入だけになると、どうでしょうか? 目標の1500万円が貯まり、相続で500万円をもらうと、合計2000万円です。

支出のペースが月17万円のまま変わらないなら、公的年金の手取り額は月10万円ですから、毎月7万円の赤字。年間84万円です。2000万円の資金は約24年分に相当します。70歳で仕事をやめると94歳までは持ちますが、それ以上に長生きするとお金が足りない事態に。

ここまでの計算は、公的年金の手取りが10万円と仮定した場合です。ご相談者が公的年金をいくらもらえるか、いつまで働くかがポイントになります。

もし、公的年金額が思ったよりも少なくて、2000万円の老後資金では足りなくなりそうなら、住居費の見直しもいずれ検討した方がよさそうです。もっと家賃が安く済み、シングルが老後を過ごすのによさそうな住宅はないか、自治体が運営する公的な住宅などを中心に、ご相談者が納得のいく住まいを時間をかけて探してみてはいかがでしょうか? 現役の間に住居費を下げられるなら、その分、貯蓄額も増やせます。

まだ、時間も選択肢もあります。50歳前に一念発起、収入が増やせないかチャレンジする、長く働き続けられるよう趣味と実益を兼ねた資格や特技を身につける、70歳以降は月10万円は無理でも3万円程度でも収入を得るなど。その都度、現実を把握し、しっかり情報収集しつつ、進んで行ってください。

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