はじめに
デジタル化は今や世界的な潮流であり、さまざまな国や企業が取り組みを加速させています。日本の成長戦略でも「デジタル化」は重要なキーワードです。
2020年は日本の教育業界にもデジタル化の大波が押し寄せようとしています。新しい時代を生きる子供たちに、どのような能力が必要とされるでしょうか。
遅れが目立つ教育のデジタル化
子供の教育に関する興味深い調査が、12月3日に発表されました。経済協力開発機構(OECD)が加盟79ヵ国・地域の15歳を対象に3年に1度行っている「学習到達度調査(PISA)」で、日本の「読解力」は2012年の4位から2015年に8位、2018年には15位へ低下したのです。
近年のデジタル化を背景に、これまでは紙の冊子での出題形式だった同調査も、2015年からはコンピュータ画面でウェブ上の長文やグラフを読み、マウスなどを操作して解答する形式に変更されました。
この中で、企業がウェブ上で宣伝する商品の安全性を他のデータと比較・検証する設問について、日本の学生の正答率が低い水準でした。ネット上にある大量の情報を精査する能力を高めていく必要があるでしょう。
日本の学校教育におけるデジタル機器の利用は、世界に後れを取っているのが現状です。日本の高校1年生の約8割が、授業でパソコンやタブレットなどのデジタル機器を「利用しない」と回答。この設問に答えたOECD加盟31ヵ国中、最も低かったのです。
学校外での利用状況も、遊びのための利用率は平均以上に高かった一方、毎日/ほぼ毎日「コンピュータを使って宿題をする」割合は3.0%とさらに低い水準でした(OECD平均は22.2%)。
エドテックが急浮上する歴史的意義
こうした中、政府は教育のIT化である「エドテック(EdTech)」を推進する方針を打ち出しています。エドテックとは、教育(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、教育分野においてICT(情報通信技術)を活用する取組みです。
通信速度が飛躍的に伸びたスマートフォンが普及したことで、容量が大きい動画などが手軽に利用できるようになったことも、政府の方針を後押ししています。
かつては「工業社会」(Society3.0)のもとで、学校は一斉一律の授業スタイルをとり、子供たちは正確に記憶する基礎学力の定着が重視されました。しかし、インターネットなどで情報を入手できる「情報社会」(Society4.0)に移り、子供たちは学校教育での蓄積を生かしつつ、自分自身の文脈で情報を編集し、協働・対話を通じて新しい価値や解答を考え、生み出す力を養成する必要が高まってきています。
さらに進んだ「超スマート社会」(Society5.0)は、人や地域とのつながりが課題を解決する時代に入っていきます。
子供たちは科学や技術など現実世界を理解し、他者との協働によって未知の課題を解決する力や倫理観を育みつつ、想定外の事態に向き合う力が必要とされます。従来求められてきた文章や情報を正確に読解する基盤的学力を確実に習得したうえで、科学的思考や新たな価値を見つける好奇心・探究力を育んでいかねばならないわけです。
こうした学びを可能にするのがエドテックです。経済産業省は「未来の教室」として、デジタル機器の活用を含めた新しい学び方を提案しています。